ドイツ語でハムはSchinken、ソーセージはWurstあるいはWürstchen(-chenは縮小語尾)という。ハムが豚のモモ肉から作られる本来贅沢な食材であるのに対して、ソーセージは雑多な肉を腸詰にしたまさに大衆食である。ドイツの街角や駅構内には必ずといってよいほど焼きソーセージ(Bratwurst)のスタンドが見られ、それらは日本での立ち食いそば屋のような役割を演じている。 ドイツ人のソーセージに対する愛着は言語面にも現れており、Wurstを含む表現には特に口語で好んで用いられるものが少なくない。『クラ独』の記述を手がかりに、その一部を見てみよう。まず、最もポピュラーな言い回しはj3 Wurst sein「人3にとってどうでもよい」であろう。直訳すれば「人3にとってソーセージである」ということで、ここではありふれた安価なソーセージがイメージされている。これと一見矛盾する表現にJetz