中井久夫は、阪神・淡路震災直後に『1995年1月・神戸「阪神大震災」下の精神科医たち』 (みすず書房、1995)を編んだ。また、「こころのケアの推進」と題して、震災時のメンタルヘルスケア活動を検証している。 ここでは、被災者の心理と行動に係るエッセイから引く。たとえば、被災した年の3月25日に次のように書く。 「電話、手紙、小包、義援金、援助物資、ヴォランティアの殺到は、われわれは孤独ではない、日本中、あるいは世界が心配してくれているという感じを与えた。全国的に『自粛』が行われたのは、日本人が連帯感を持っている大きな証拠だった。国際的にもだ。あのサラエボからも援助物資がきたという。モンゴルからも毛布が、ロシア、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)からもお金が。中国からは多種の物資がきた。スイスの救助隊はほんとうに真剣だった。フランスも」 「犯罪が少なかったのには、警察、消防、自衛隊がいっぱいい