「ダーン、ダーン。」 ものすごい大砲の音とともに、あたりの土が高くはねあがります。機関銃の弾が、雨あられのように飛んできます。 昭和七年二月二十二日の午前五時、廟巷の敵前、わずか五〇メートルという地点です。今、わが工兵は、三人ずつ組になって、長い破壊筒をかかえながら、敵の陣地を、にらんでいます。 見れば、敵の陣地には、ぎっしりと、鉄条網が張りめぐらされています。この鉄条網に破壊筒を投げこんで、わが歩兵のために、突撃の道を作ろうというのです。しかもその突撃まで、時間は、あと三十分というせっぱつまった場合でありました。 工兵は、今か今かと、命令のくだるのを待っています。しかし、この時とばかり撃ち出す敵の弾には、ほとんど、顔を向けることができません。すると、わが歩兵も、さかんに機関銃を撃ち出しました。そうして敵前一面に、もうもうと、煙幕を張りました。 「前進」 の命令がくだりました。待ちに待った