そんな時にぜひ再読すべき書物として、私の念頭に繰り返し浮かぶのは、プリーモ・レーヴィの『休戦』である。レーヴィは『これが人間か』という作品で知られるアウシュヴィッツの生存者であり、戦後の世界平和のための証言者、そして現代イタリアを代表する文学者だ。レーヴィは1944年2月から45年1月までアウシュヴィッツ強制収容所で強制労働を強いられ、同収容所がソ連軍に解放されることによって自らも解放された。 ロシア軍の侵攻開始から1年以上がすぎたが、ウクライナでの戦闘はまだ続いている。近い将来に終わりそうもない。私の脳裏には「終わらない戦争」という言葉がずっと点滅している。どうすれば「終わる」のか、「終わる」とはどういう状態を指すのか、曖昧なまま殺戮と破壊が継続している。この間に、ロシアのプーチンとベラルーシのルカシェンコが会談し、ベラルーシ領内への戦術核兵器の配備を承認した。わずか2〜3年前に市民から