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ブックマーク / finalvent.cocolog-nifty.com (188)

  • [書評]ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争(ディヴィッド・ハルバースタム): 極東ブログ

    「あの年読んだってなんだっけ」と今年の読書のことを後に振り返るとしたら、おそらく社会的に話題となった村上春樹「1Q84」(参照)より、書「ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争(ディヴィッド・ハルバースタム)」(上巻参照・下巻参照)になるだろう。 読み終えるまで一か月かかった。大著であることもだが内容が重く、なかなか読み進められなかった。上下で11部53章あり、一つの部が軽く新書一冊分の内容を持っていることもあった。ある部を読み終えてから、過去に読んだ書籍を読み返したこともあった。再読しようと書架や実家の書架を探し回り見つけられず、再度購入した書籍もあった。そうした一冊に「新「南京大虐殺」のまぼろし(鈴木明)」(参照)がある。同書はかつて標題の関心から読んでつまらないと捨ててしまったのかもしれない。 書「ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争」は標題に「朝鮮戦争」とあるように、もちろ

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    RanTairyu 2009/11/18
  • フォーリン・ポリシー誌掲載マイケル・グリーン氏寄稿をめぐって: 極東ブログ

    フォーリン・ポリシー誌(電子版)に米戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問・日部長のマイケル・グリーン氏が23日寄稿した「Tokyo smackdown(民主党政権にお灸を据える)」(参照)が現下の日米関係の状態を考える上で示唆に富んだものだった。同氏はこの寄稿の前に、今月(11月号)のフォーサイト誌に「米国はいつまでも鳩山政権にやさしくはない」を寄稿していて、その論調からすると、現下の民主党政権の状況に対して氏は相当に困惑か悲嘆を感じているのではないかと思って私は読み出した。中盤までそういう悲憤のトーンも感じられたが、最終段では楽観的な展望を述べていた。 話の流れとしては最初にフォーサイト誌の寄稿から見たほうがわかりやすいかもしれない。 発足から一か月を経た鳩山政権は、世論調査で高い支持率を維持している。米国のオバマ政権も敬意と寛容をもって支持する姿勢を示し、あからさまな衝突は避けるよ

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    RanTairyu 2009/10/26
  • ワシントン・ポスト紙掲載「米軍一括案の米側圧力」を巡って: 極東ブログ

    普天間飛行場移設に伴う日米安全保障体制を政権交代後も維持するよう、米側から日への圧力が高まっている。この件についてワシントン・ポスト紙にも興味深い記事が掲載され、日でも報道された。昨日のエントリ「ウォールストリート・ジャーナル掲載「広がる日米安保の亀裂」について: 極東ブログ」(参照)に続き、こちらも触れておきたい。まず日での報道の状況、つまり、日のマスメディアは該当のワシントン・ポスト紙記事をどう受け止めたのか。受け側の状態から確認しておきたい。 ワシントン・ポスト紙の対日安全保障確認圧力の記事は、22日付けの第一面に掲載された。第一面は当然ながら主要な話題であることの指標でもあるので、日の大手各紙はウォールストリート・ジャーナル紙の寄稿よりも取り上げていた。 朝日新聞による「米高官「最も厄介なのは中国ではなく日」 米紙報道」(参照)では、前半でワシントン・ポスト紙の意見、後

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    RanTairyu 2009/10/24
  • [書評]毎月新聞(佐藤雅彦): 極東ブログ

    「だんご三兄弟」や「ピタゴラスイッチ」のプロデュースで有名な佐藤雅彦さんのコラム集「毎月新聞」(参照)が中公文庫の新刊になっているのを見て、ちょっと懐かしくなって買って読み直した。とてもよかった。美文というのではないのだが、これだけの現代的な名文コラムはないんじゃないか。しかも、名文コラムにありがちな、奇妙な力こぶも、鼻につくレトリックもない。なによりよかったのは、10年して読み直してこの文章の真価がはっきりわかることだった。 「毎月新聞」は、1998年10月21日から2002年9月18日まで、ほぼ4年に渡り、毎月、「毎日新聞」に掲載された。ミニチュア版の新聞の体裁で独自の四コマ漫画(実際には三コマが多い)と余録も掲載されている。たのしい洒落だ。そういえば、この手の趣向は山夏彦氏の「「豆朝日新聞」始末 (文春文庫)」(参照)にもあった。 紙面の体裁は、文庫の表紙にも生かされている。この体

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    RanTairyu 2009/10/18
  • [書評]アメリカ人が作った『Shall we dance?』(周防正行): 極東ブログ

    『Shall we dance?』を巡る3目のエントリ。最初は日米の映画とノベライズを扱った「極東ブログ:[書評]Shall we ダンス?(周防正行)」(参照)、2目は昨日の「極東ブログ:[書評]『Shall we ダンス?』アメリカを行く(周防正行)」(参照)。書は、『Shall we dance?』の米国版を巡る話。2005年、大田出版からの出版。文庫版はないもよう。 前作に比べると、とにかく読んでおいていいんじゃないのという迫力は乏しく、文庫化されないかもしれない。また、前作時点では米国版リメークってあるの?という話があったのでこのが出てきた。書では次はブロードウェイのミュージカルかなとあるが、その話はあったのだろうか。なかったんじゃないかな。 だとすると、これで日映画『Shall we dance?』に端を発した周防正行監督の物語はここで終わることになる。その間、10

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    RanTairyu 2009/09/21
  • [書評]『Shall we ダンス?』アメリカを行く(周防正行): 極東ブログ

    先日『Shall we ダンス?』の日米版の映画を見て、ノベライズも読んだ話は「極東ブログ:[書評]Shall we ダンス?(周防正行)」(参照)に書いた。その後、書、「『Shall we ダンス?』アメリカを行く(周防正行)」(参照)を文庫のほうで読んだ。 『Shall we ダンス?』日版の映画が公開されたのは1995年。その後、この映画に目をつけたアメリカ映画配給会社とのやりとりを周防監督自身が紀行文風にまとめたもの。随所の写真も独自の味わいを添えている。文庫化の前は1998年に同題で大田出版から出版されていたものだ(参照)。書の経緯についてはそれ以上私は知らないが、一部は文藝春秋にも掲載されたようだ。 話は時間順に展開され、途中同じような話がぐるぐると循環しているような印象もあるが、映画産業論としても、また映画を基軸にした日米欧の体当たり文化論としても非常に興味深い。随

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    RanTairyu 2009/09/19
  • [書評]データで斬る世界不況 エコノミストが挑む30問(小峰隆夫, 岡田恵子, 桑原進, 澤井景子, 鈴木晋, 村田啓子): 極東ブログ

    [書評]データで斬る世界不況 エコノミストが挑む30問(小峰隆夫, 岡田恵子, 桑原進, 澤井景子, 鈴木晋, 村田啓子) 米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻が日に伝えられたのが昨年の9月16日。世界金融危機が格化した契機として、リーマンショックと呼ばれることもある。あれから1年が経ち、振り返る。なぜあの金融危機が起きたのか、今後は防ぐことができるのか、今後の世界経済、また日経済はどうなるのか。日では政治経済の話題は新政権の発足に押されていたが、このブログも6年も書いてきたことあり、私なりの総括も考えていた。その際、書籍として一番拠り所となったのが、書「データで斬る世界不況 エコノミストが挑む30問(小峰隆夫, 岡田恵子, 桑原進, 澤井景子, 鈴木晋, 村田啓子)」(参照)であった。 書が出版されたのは4月下旬。しかも内容の原型はオンラインで刻々と公開されたものをその時

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    RanTairyu 2009/09/19
  • [書評]脳の中にいる天才(茂木健一郎編・竹内薫訳): 極東ブログ

    「脳の中にいる天才」(参照)は、脳科学、心理学、人類学などの第一人者らによって学際的な視点から人間の創造性ついて語った講演録を翻訳・編集した書籍である。 元になる講演会は、2004年4月イタリア、ボローニャ近くのベルチノロ村の古城でソニーコンピュータサイエンス研究所主催で開催され、後、2007年3月、同研究所の所眞理雄氏と脳学者茂木健一郎氏の編集によって英書「Creativity and the Brain」(参照)として出版された。書はこれを科学ライターの竹内薫氏が翻訳した形になっているが、竹内氏自身も2004年の講演会に参加しており、訳者あとがきを読むと氏も実質編集に参加したように受け取れる。 講演では「創造性と脳」というテーマの下、7つの講演があり、書に収録されている。以下専門分野については同書には言及がない場合は私の判断で補った。 アラン・スナイダー(Allan Snyder:

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    RanTairyu 2009/09/11
  • [書評]僕は人生を巻き戻す(テリー・マーフィー): 極東ブログ

    なんど手を洗ってもまた手を洗わずにはいられない。ベッドのシーツにシワやヨレがあるとそれだけで眠ることができない。家を出て五分後に鍵を当にかけたのかどうしても確認に戻る。普通の人でもそういう理不尽な行動をとることがある。それが過度になり、人も非常な苦痛に感じ、日常生活に支障を来すようになると、精神疾患として強迫性障害が疑われる。 診断については「DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断の手引」に基準があるが、強迫性障害は、人の意志と無関係に不快感や不安感を伴って脳裏に浮かぶ強迫観念と、強迫観念を打ち消すために行われる強迫行為から構成される。強迫行為は、家に戻って毎回する鍵の確認のように、それなりに誰でも了解できるものから、他人にはまったく理解できない行為もある。指と指が触れてはならないといった強迫行為の理由は、他人には理解できないが、強迫性障害者人は了解している。理不尽ということを理

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    RanTairyu 2009/09/11
  • [書評]不透明な時代を見抜く「統計思考力」(神永正博): 極東ブログ

    例えば、小泉改革で格差は拡大したとよく言われる。当だろうか。いろいろな議論はあるが、議論の大半は論者の主観であったり、論者の身の回りの生活感覚から導かれた、ごく局所的な状況報告であったりする。 それ以前に、「小泉改革で格差は拡大した」という命題はいったい何を意味しているのだろうか。命題は真または偽として評価されるものだ。「それが当であるか、あるいは嘘であるか」という判定は、このケースでは格差の定義とその評価法に依拠している。一番明快な説明は、数値的・数学的に格差なる社会現象を定義し、実際に統計データに当たってみて、その正否を見ればよい。それが方法論ということでもあり、統計学はその数値的な表現から方法論によく利用されている。 書、「不透明な時代を見抜く「統計思考力」(神永正博)」(参照)は、統計から各種議論の正否を考えるための参考書でもあり、加えて統計を使って考える際の勘所を比較的平易

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    RanTairyu 2009/09/02
  • [書評]Shall we ダンス?(周防正行): 極東ブログ

    先日NHK「ワンダー×ワンダー」という枠だったと思うが、「シャル・ウィ・“ラスト” ダンス?」という番組を見た。バレリーナの草刈民代さんの最終引退公演「エスプリ~ローラン・プティの世界~」までのドキュメンタリーという仕立てで、それを見守る夫の周防正行さんもよく描かれていた。そういえば、二人の馴れ初めともなった1996年(平成8年)の映画「Shall We ダンス?」(参照)を見過ごしていたと思い出し、この機に見ることにした。私が沖縄に出奔した翌々年のことだ。その前には私は池袋駅の圏内に住んでいたこともあり、映画に出てくる江古田あたりのあの時代の風景が妙に懐かしかった。 話は、さえない会社の経理畑の42歳サラリーマン杉山正平が、通勤電車の窓からたまたま見かけた、ダンス教室の窓に佇む美女岸川舞に、心を奪われ、彼女に接近するためにダンス教室通いとなり、次第に社交ダンスにのめりこんでいく物語である

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    RanTairyu 2009/08/24
  • [書評]新しい労働社会―雇用システムの再構築へ(濱口桂一郎): 極東ブログ

    「新しい労働社会―雇用システムの再構築へ(濱口桂一郎)」(参照)の帯には「派遣切り、雇い止め、均等待遇 混迷する議論に一石を投じる」とあり、近年社会問題として問われる各種労働問題がテーマにされていることが伺える。こうした諸問題に私もそれなりに思案し戸惑っていたこともあり、何かヒントでも得られるとよいと思い、また岩波新書なら妥当なレベルの知的水準で書かれているだろうと読み始めみた。ところがヒントどころのではなく、ほとんど解法が書かれていた。 序章「問題の根源はどこにあるのか」からして目から鱗が落ちる思いがした。私は山七平氏が指摘していたように戦後日の会社は先祖返りをして江戸時代の幕藩体制の藩と同質になったと理解していたので、濱口氏が「日型雇用システムにおける雇用とは、職務ではなくてメンバーシップなのです」と指摘しても、それはそうだろうくらいに納得した。だが重要なのはそこではなかった。

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    RanTairyu 2009/08/03
  • [書評]真説 アダム・スミス その生涯と思想をたどる(ジェイムズ・バカン): 極東ブログ

    結局、「真説 アダム・スミス その生涯と思想をたどる(ジェイムズ・バカン)」(参照)を三回読んだ。読みづらいではけしてない。量も厚めの新書くらいだろうか。しかし、何度も読まざるを得ないような、久しぶりに出合った怖いだった。 繰り返し読むことでじわじわと筆者の知の力量が伝わってくる。この筆者なら、このネタでこの五倍の分量は書けるだろうと、実際にその五倍の量の「アダム・スミス伝(イアン・シンプソン・ロス)」(参照)と比較したい気持ちがしたが、幸いにして同書邦訳書は絶版のようだ。近年の評伝としてはロス氏のほうが定番なのか、気になって米国アマゾンの読者評を見るとぱっとしないが、反してバカンの原書「The Authentic Adam Smith: His Life and Ideas」(参照)はより多くの好評で迎えられている。ああ、そうなのだろうと思う。 邦訳書「真説 アダム・スミス」では、日

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    RanTairyu 2009/07/22
  • [書評]アダム・スミス 『道徳感情論』と『国富論』の世界(堂目卓生): 極東ブログ

    ところで今日7月17日は経済学の祖と言われるアダム・スミス(Adam Smith)の命日である。1723年の初夏、対岸にエディンバラを臨む、スコットランドの港町カコーディーに彼は生まれたが、その日のほうはわかっていない。幼児洗礼を施された6月5日を便宜上誕生日と見なすこともある。父は弁護士で税関監督官の仕事をしていたが、アダムが生まれる半年前に急死し、身重の17歳のを残した。アダムは極貧に育ち、母を支え、生涯を娶らなかった。童貞だったかどうかはあまりスミス研究において重視されないようでもある。 2008年に、日経新聞掲載記事を膨らませる形で描かれ、同年サントリー学芸賞政治・経済部門を受賞し、また同年のエコノミストが選ぶ経済図書ベスト10にも入った堂目卓生著「アダム・スミス 『道徳感情論』と『国富論』の世界」(参照)には、そうした話、つまりアダム・スミスの私生活に類した話は、ほとんど描か

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    RanTairyu 2009/07/17
  • オバマの戦争: 極東ブログ

    米国オバマ大統領は、アフガニスタン南部ヘルマンド州に現地時間で2日、海兵隊4千人を投入し、アフガン治安部隊と数百人の英国軍とともに、旧支配勢力タリバン大規模掃討作戦「剣の一撃(Strike Of The Sword)」の火蓋を切った。米軍増派規模は2万1000人。米国海兵隊投入の作戦としては、日人にも記憶に残る2004年のイラク、ファルージャ掃討作戦以来の戦闘規模となる。 今回のオバマの戦争がブッシュの戦争に似ているのは、経緯から見るとわかりやすい。ブッシュ政権下ではアフガン投入米軍を9万人から13万人余に増派する計画があったが、オバマ政権は増派の点でブッシュの戦争をオバマの戦争として引き継いだ。拡大規模としてオバマ政権は今後、ブッシュの戦争におけるイラク投入軍と同規模の26万にまで増派したい意向だ。ただし、米国防総省はアフガン統治軍の創設に十分な期間と予算を求めているため、具体的な計画

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    RanTairyu 2009/07/03
  • [書評]「明日また電話するよ」、「夕方のおともだち」(山本直樹): 極東ブログ

    昨年と今年に出版された二冊とも漫画家、山直樹作品の短編選集。「明日また電話するよ」(参照)が2008年7月に出版され、好評だったのか続編として「夕方のおともだち」が2009年5月に出版された。レイティングはされていないようだが、漫画表現による性や暴力の描写も多い。帯に作家西加奈子の「何度も読みました。私の中の女が、犯されたような気持ち。ズルい」とあるが、そうしたエロス性を求める読者もあるだろうし、男女の差や個人的な資質の差でいろいろな受け止め方があるだろう。私にはどちらかと言えば短編らしい叙情的な作品が多いように思えた。 選集「明日また電話するよ」収録の作品のいくつかは、十年ほど前に雑誌で既読であったことを思い出し、そのまま過ぎていった自分の十年余の歳月を思った。一読後は、懐かしいとしても、自分の青春の残滓を含め、すでに過ぎ去った叙情としてそれほどの印象は残らなかった。だが、その後何度も

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    RanTairyu 2009/07/01
  • [書評]「無駄な抵抗はよせ」はよせ(日垣隆): 極東ブログ

    書名は少し挑戦的だ。「「無駄な抵抗はよせ」はよせ(日垣隆)」(参照)というのだから、「無駄とわかっていても抵抗はしてみよう」ということになる。抵抗する対象は何か? 帯に「体と心のピンチに! やっぱり痩せたい、老いたくない、安らかでいたい、ボケたくない」と続くから、老化や精神的につらい状況が対象だとわかる。では書に抵抗できるだけのツールがあるか。帯はこう続く。「著者が自身のために集めた科学と智恵の簡単極意をお裾分け」。そうだなと読んでみて思った。率直なところ無駄な抵抗もしてみるものだとまでは思えなかったが、きちんとお裾分けはあった。 内容は、第一線で活躍されている科学者を中心にジャーナリスト日垣隆によるインタビューを今回のコンセプトで8点まとめたものだ。 私が一番面白かったのは、1946年生まれ、というから今年63歳になる日航空の現役パイロット小林宏之氏の話だった。1968年にパイロット

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    RanTairyu 2009/06/30
  • [書評]サブリミナル・インパクト 情動と潜在認知の現代(下條信輔): 極東ブログ

    人間は自分で意識し、自由な意志をもって行動していると思い込んでいる。だが脳の機能を実験的に解明していくと、実は人が自覚していない脳の認識プロセスの結果として、その意識や意志が出力されていることが明らかになってきた。 人が気がつかない何かが、その人の意識を決定しているというのだ。では、その何かとは何か。現代に溢れる各種メディアの情報である。意識的に気がつかないがゆえに、人の意識の及ばないところにあってその意識に注入され、意識を決定する。それが現在の人間の置かれた状況であり、そもそも人間とはそのような存在として進化してきたのではないか。書「サブリミナル・インパクト 情動と潜在認知の現代(下條信輔)」(参照)が問い掛ける、ある意味で奇っ怪なメッセージはそれだ。 人の脳の意識構造にありながら人は意識していない領域を、著者下條は潜在認知と呼び、潜在認知を突き動かしているのは情動であると考え

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    RanTairyu 2009/06/26
  • [書評]武士から王へ - お上の物語(本郷和人): 極東ブログ

    武士から王へ - お上の物語(郷和人)」(参照)は、日中世において武士が王に変遷していく過程と体制を新視点から議論ししている。「王」を主題に据えた、日の王権論でもあるが、読後の印象としては、そうした特定のテーマより、コンサイスな日史概説として優れた叙述になっていた。 通常の意味で日史概説なら通史的であるべきだが、書は古代史と近代史・現代史は除外され、時代区分では中世史のみを扱っている。テーマも時代も限定されるがゆえに、現代人の知的な関心としても限定されるだろうが、その核心を背理的に言うなら、日史の理解にしばしば必然的に仕組まれる右派及び左派の天皇幻想を解体する点で極めて現代的な知的課題でもある。 例を挙げよう。書は、中世以降、皇位は誰が決めたのかと問い、武家であると答える。義務教育の範囲の歴史知識でも単純に答えられることだと単純に思う人もいるだろう。しかし、では、承久の乱

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    RanTairyu 2009/06/15
  • [書評]1Q84 book1, book2 (村上春樹): 極東ブログ

    文学は社会が隠蔽すべき猥雑で危険な思想をあたかもそうではないかのように見せかけつつ、公然に晒す営みである。日の、物語の出で来初めの祖なる「竹取物語」は天皇とその体制を愚弄する笑話であった。日歴史を俯瞰して最高の文学であるとされる「源氏物語」は天皇の愛人を近親相姦で孕ませ、それで足りず少女を和姦に見立てて姦通する物語である。 同様に村上春樹の「1Q84」(book1参照・book2参照)の2巻までは、17歳の少女を29歳の男が和姦に見立たて姦通する、「犯罪」の物語である。また国家に収納されない暴力によって人々が強い絆で結ばれていく、極めて反社会的な物語でもある。それが、そう読めないなら、文学は成功している。あたかも、カルトの信者がその教義のなかに居て世界の真実と善に疑念を持たないように。いや、私は間違っている。「1Q84」は、私たちの社会がその真実と善に疑念を持ち得ないような閉塞なカル

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    RanTairyu 2009/06/06