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ブックマーク / cruel.hatenablog.com (69)

  • 新田『アメリカ文学のカルトグラフィ』:あんまり認知地図になってません。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    アメリカ文学のカルトグラフィ ――批評による認知地図の試み 作者: 新田啓子出版社/メーカー: 研究社発売日: 2012/04/19メディア: 単行購入: 1人 クリック: 49回この商品を含むブログを見る 批評による認知地図の試み、というんだが、あまり認知地図にはなっていない。あとがきで、ジェイムソンが認知地図というのはケヴィン・リンチ『都市のイメージ』が発端だと述べているということが書かれているんだけど、それに20年も興味を持ったのであれば、そのケヴィン・リンチが何をやったのか読んでほしいなあ。都市のイメージは(改善の余地はあるけど)邦訳もあるんだから。書では原題が挙げられているだけで邦題もあがっておらず、伝聞として書かれているところを見ると、リンチを読もうと思ったことさえないようにもうかがえるんだが。 都市のイメージ 新装版 作者: ケヴィンリンチ,Kevin Lynch,丹下健

    新田『アメリカ文学のカルトグラフィ』:あんまり認知地図になってません。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
    RanTairyu
    RanTairyu 2012/05/14
  • フランク『時間と宇宙のすべて』:科学的な時間のとらえ方と一般的な時間のとらえかたを並行させたがうまく融合していない。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    時間と宇宙のすべて 作者:アダム・フランク,Adam Frank早川書房Amazon Time, Space, and Everything にかけた題名かと思ったら、原題は About Time なんだね。 さて、時間のすべてを書こうというで、開けると冒頭3ページ目に「ビッグバン理論は死にかけている」と書かれている。おおお、すごい、そうなんですか! ということでいそいそとページをめくると、序章が終わって第一章になるといきなり石器時代の話。石器時代の時間感覚とは、という話で、農耕が始まって循環する時間の概念がきて、都市化により時間概念が変化し、時計が発明され、電子メールが出てきて、アウトルックの時間管理が…… 分厚いの半分くらいまでは、人間社会における時間概念の変化。そしてそこからやっと、科学的な時間概念の話になってきて、ビッグバンとかインフレ宇宙論とかひも理論とかになってくるのはかな

    フランク『時間と宇宙のすべて』:科学的な時間のとらえ方と一般的な時間のとらえかたを並行させたがうまく融合していない。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
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    RanTairyu 2012/05/13
  • 篠原『全-生活論』:全体性が重要といいつつ全体性って何かも言えず、<母性>にすり寄る情けない本。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    全―生活論: 転形期の公共空間 作者:篠原 雅武以文社Amazon うーん、やめてほしいんだよね、この手の哲学的なお遊びに「転形期の公共空間」なんて副題つけるのは。公共スペースデザインの話だと思って読み始めたら、特に目新しい発想が何もない哲学者が、己のまとまらなさをだらしなく垂れ流しているだけじゃないか。 著者はしつこく、生活とか全体性が失われているんだ、という。で、プライバシーがないのも全体性喪失、原発問題も全体性喪失、貧乏な人がいるのも全体性喪失、孤独死も全体性喪失、子育ての苦労も全体性喪失、あれも生活や全体性これも生活や全体性。そして、こういう個別の問題に技術的に対処するのではだめで、その根源にある生活とか全体性とかの回復がいるんだと。 で、その生活とか全体性って何? 書はそれがまったく出てこない。全体性の全体像がないまま、ないないないないと並べ立てるだけ。あらゆる社会問題は、生活

    篠原『全-生活論』:全体性が重要といいつつ全体性って何かも言えず、<母性>にすり寄る情けない本。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
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    RanTairyu 2012/05/12
  • 山内『ウィルスと地球生命』:おもしろいネタ豊富、まとまりもよく、もう少し書き込んでくれれば文句なし。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    ウイルスと地球生命 (岩波科学ライブラリー) 作者:山内 一也岩波書店Amazon ウィルスというものが、みんなの思っているよりずっと多才な役割を果たしているという。進化にも役立ち、作物の品種改良にも貢献、二酸化炭素固定にも一役買って、人間の胎児も守るという八面六臂の活躍ぶり。 ウィルスとは何か(あと、ウィルスじゃなくてウイルスと書くのが正式なんだって。キャノンはキヤノンが正しいとかみたいな話ね)、それがどういう研究史をたどってきたかをざっとまとめ、それが生物かどうか、細菌とどうちがうのか等々、素人なら疑問に思うこともさくっとまとめてくれる。それを背景として、あとはもう意外なところで活躍するウィルスのあれこれを次々に繰り出す。 非常にまとまりもいいし、言いたいことが明快。後半に繰り出される各種の例も、「へえ〜」度が高く、飽きない。下の「ほほえみ」は、こういう書き方を少しみならってほしい

    山内『ウィルスと地球生命』:おもしろいネタ豊富、まとまりもよく、もう少し書き込んでくれれば文句なし。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
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    RanTairyu 2012/05/04
  • 川上他『ヒトはなぜほほえむのか』:まとまりが悪すぎる。次回はもっとがんばれ。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    ヒトはなぜほほえむのか―進化と発達にさぐる微笑の起源 作者:清文, 川上,文人, 川上,清子, 高井新曜社Amazon ヒトはなぜほほえむのか、というだけれど、ヒトがなぜほほえむのかは、結局仮説としても軽く紹介されるだけ。特に、著者たちが研究対象としている、自発的微笑というやつは、なぜ存在するのか結局わからない。なーんだ、だったらこのの題名って、不当表示に近いじゃん。 微笑と笑いはちがう、という話からはじめて、赤ん坊や胎児やサルも自発的微笑をする、という。書は、いまの一行を延々一冊分にひきのばしただ。しかもその引き延ばし方は、英語で論文を書いた方が注目されるとか、研究者から手紙をもらったとか、筋に関係ない些末な話がやたらにあれこれちりばめられていて、お世辞にも読みやすいとはいえないし、読み終えたあとも結局何を言いたかったのか印象が非常に希薄。 自発的微笑というものがあるというの

    川上他『ヒトはなぜほほえむのか』:まとまりが悪すぎる。次回はもっとがんばれ。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
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    RanTairyu 2012/05/04
  • 堀江『時計回りの振り子』:こういう余韻のある文はうらやましい。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    振り子で言葉を探るように 作者:堀江 敏幸毎日新聞社Amazon時計まわりで迂回すること - 回送電車V 作者:堀江 敏幸中央公論新社Amazon 書評集とエッセイ集。ぼくも書評をいっぱい書いているし、その分他人の書評は気になるが、目にするものの半分は書評の名に値しないクズ感想文、三割はもう少しうまくかけよという感じで、いい書評だと思えるのは二割ほどしかない。 堀江の書評は、(すべてとは言わないが)相当部分がこの二割に入る。同時期に朝日新聞の書評委員を務めたこともあるが、彼の書く書評のおかげで紙面が救われていたときもしばしばあったと思う。 そして、彼の書き方はぼくとはまったく流派がちがう。ぼくは例外もあるけれど、基的にはそのが与えてくれる価値とは何か、というのを明示的に書こうとする。堀江は、それを明示的に書くよりは、何となく匂わせることを選ぶ。そして、それが実にうまい。以前、堀江による

    堀江『時計回りの振り子』:こういう余韻のある文はうらやましい。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
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    RanTairyu 2012/04/25
  • 今和次郎『日本の民家』:民家の持つ合理性を見抜いた名著 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    の民家 (1937年) Amazon 久しぶりに読んだ。考現学の今和次郎が、日の民家をあちこち調べてまわって記録した。学生の頃に一度読んだ記憶があるが、ほとんど忘れていたけれど、こんど、「今和次郎「日の民家」再訪」を読んだときに記憶を復活させるために読み直した。 すごくいい。分析は日の漁村や農村にある各種の民家の構造や道具が持つ合理性を中心に記述されていて、失われゆく日の民家などについてのノスタルジーはあるものの、最小限。気候、産物、経済、その他各種の条件が民家の構造には関係していて、当然ながら各地で取れる産物をそのまま使わなくてはならない。それが独特の形を生む。その記述をスケッチがうまく補って、見ていて飽きない。 マルセル・モースとか、イザベラ・バードとか異人さんの日旅行記にはこれに近い印象のものがかなりある。日人の地方記述期は、都会人の変な幻想が垂れ流されてることがや

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    RanTairyu 2012/04/21
  • ウォールセン『バイオパンク』:新ジャンルに取り組むアマチュアたちの挑戦とその障害をまとめた、わくわくする本。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    バイオパンク DIY科学者たちのDNAハック! 作者:マーカス・ウォールセンNHK出版Amazon 遺伝子組み換え、と聞いただけで怖じ気づく人は多いが、その恐ろしい遺伝子組み換えを、いまやそこらのホビイストが平気で始めている。書はその動きや遺伝子組み換えホビイストたちの実像を描き出すとともに、それに伴う懸念や規制の動きを述べつつも、最後には希望を描く、先駆的なだ。 そもそも生命の核心たる遺伝子にマッドサイエンティストじみた科学心を刺激される人は多い。そして高価だった遺伝子組み換え用機器は、安くなって中古品も増えた。各種の遺伝子配列情報も容易に入手できる。すでに技術的、価格的には個人でも十分に手が届くのだ。 それがバイオ技術の突破口になるのでは? 金と時間に縛られる商用バイオ技術(期待ほどの成果はない)に対し、制約のないホビイストは、意外な性質や用途を見つけるかもしれない。かつての無線や

    ウォールセン『バイオパンク』:新ジャンルに取り組むアマチュアたちの挑戦とその障害をまとめた、わくわくする本。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
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    RanTairyu 2012/04/21
  • ポズナー&ロスバート『脳を教育する』:いい本だが専門的。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    脳を教育する 作者:ポズナー,マイケル・I.,ロスバート,メアリー・K.青灯社Amazon 装幀やタイトル表紙は結構通俗科学書に見せようとしているけれど、かなり専門的。第一章は、ずっと氏か育ちかの議論の紹介に費やされ、第二章は、脳の活性部位を同定する方法の歴史技術をおさらい。いろいろ基礎固めが長くて、なかなか論に入らない。 その後も、いろんな研究の成果を細かく追っていくため、話がなかなか見えない。エピソード → 学問的な知見 → 異論とその否定 →まとめ、という通常の通俗書の流れがまったくない。で、帯には「読み書き算数教育の抜的見直し」とあるけど、言っていることはあんまり抜的には思えないんだが…… 個別の観察や研究の成果はとてもよくて、その位置づけなんかも、うまくまとまってると思う。全体にとてもよい。ただ書きぶりが専門的にすぎる。これを一般の人が読み始めたら、すぐに飽きると思う。

    ポズナー&ロスバート『脳を教育する』:いい本だが専門的。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
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    RanTairyu 2012/04/19
  • ターケル『仕事!』:まだ途中だが涙が出そうなほどいい。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    仕事(ワーキング)! 作者:スタッズ・ターケル晶文社Amazon 分厚いだし、場所ふさぎだし、過去20年で何度か資料や邦訳確認で使っただけだし、たぶん質より量って感じだろうからさっさと読んで処分しようと思って読み始めたが、ちょっとすごすぎて処分できそうにない。 農民、新聞配達の男の子、建設、日雇い、その他あれやこれやの談話集。学歴はないのに異様な教養を端々にのぞかせたり、単純な生活の苦しみと自分の仕事の意義に対する疑義や自信のないまぜの気持ちをぼくとつかつ雄弁に述べたり、彼らが述べる労働運動や黒人解放への違和感とか、あちらこちらに輝く細部がありながらもの悲しい。グチと自慢と正直な感想と、見栄と不安と、自負と諦念と時代への反発と、孤独と仲間意識と、とにかくすべてがある。だれもかっこつけた公式見解なんか述べず、素直に語っているのはすごいし、これだけ多様な人にこれだけ語らせているインタビュアー

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    RanTairyu 2012/04/12
  • 大田俊寛『グノーシス主義の思想』:おもしろいが、どこまでが定説? ポアは? なぜこんな変な発想が要請されたのか? - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    グノーシス主義の思想―“父”というフィクション 作者:大田 俊寛春秋社Amazon とてもよいオウムを書いた大田の処女作で、グノーシス主義にも(『ヴァリス』とか読んだので)興味あったので読んで見た。 オウムと同じで、とてもすっきりしていて明快。「父親」というものの観念性を元に、その観念性を逆手にとって承認を通じた納得が生まれ、それが社会にも拡大されて社会が生じ、というクーランジュの発想(『古代都市』うちにあるのに読んでないや)から始まって、いろんなグノーシス文献を手際よくまとめて整理していくのは見事。最後は当の神様をある種のフィクションとして認識しつつも、それを鏡として己を見直し、そして虚構性を敢えて受け入れることで社会性を構築するような発想なんだというところにそれがたどりつくのは、読む側にも「そうか!」という達成感があってすばらしい。そしてこれまでの論者の議論をロマン主義的と切って

    大田俊寛『グノーシス主義の思想』:おもしろいが、どこまでが定説? ポアは? なぜこんな変な発想が要請されたのか? - 山形浩生の「経済のトリセツ」
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    RanTairyu 2012/04/11
  • 斉藤・中川編『人間行動から考える地震リスクのマネジメント』:住宅関連の地震リスク低減施策を行動経済学で実証的に考えたよい本。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    人間行動から考える地震リスクのマネジメント: 新しい社会制度を設計する 作者:誠, 齊藤,雅之, 中川勁草書房Amazon 題名を見て、例によって経済偏重の社会を見直せとかエコなナントカとか、その手のインチキじゃねえだろうなあ、とものすごく警戒していたが、至極まとも。 基的な問題意識は、特に住宅の建設・選択においてどうやって地震リスクをもっと考えた行動を人々にしてもらうか、というもの。耐震性の高い住宅を選んでもらうにはどうしたらいいかとか、それが地価に反映されるかとか、保険加入をどう促進するか、とか。で、その中で日住宅ローンの問題も建築士の問題も、中古マンション市場(またはそのあってなきがごとき実態)の問題も、マンション改修投資の問題も挙げている。最後には人的資の影響も見ている(この最後のだけ住宅から離れて他とちょっと焦点がずれるが)。 ここらへんをちゃんと実証的に検討しているの

    斉藤・中川編『人間行動から考える地震リスクのマネジメント』:住宅関連の地震リスク低減施策を行動経済学で実証的に考えたよい本。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
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    RanTairyu 2012/04/06
  • シュナペール『市民権とは何か』:アメリカもっと調べたらよいのでは? - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    市民権とは何か 作者: ドミニク・シュナペール,富沢克,長谷川一年出版社/メーカー: 風行社発売日: 2012/01メディア: 単行購入: 1人 クリック: 39回この商品を含むブログ (3件) を見る 結論を見よう。冒頭にこうある。 この十年ほどの間に「市民」と「市民権」という言葉はなぜこんなにも広く普及し、ついには私たちの心にしっかり定着するに至ったのか。 これを見て、ぼくはこれがすごく古いの翻訳なのかと思って、あわてて奥付を見直したんだけれど、2006年のなんだよねー。「この十年ほど」??? いや、まずぼくとは世界認識がちがうみたい。 書は、市民権概念の歴史みたいなものを延々と(数十ページにもわたる文献の引用をたくさん散りばめて――おかげですごく読みにくい)解説する。それで市民権についていろんな考え方があって批判もあるよ、というのをまとめる。あんまりまとまらず羅列に終わってい

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    RanTairyu 2012/04/06
  • 高橋英利『オウムからの帰還』:オウム内部、サティアンの様子などの記述はおもしろいが、まだ神様依存症らしい。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    文庫 オウムからの帰還 (草思社文庫) 作者:高橋英利草思社Amazon 「修行」の記録やサティアン内部の様子の記述などは非常におもしろい。ただ、ぼくはオウム事件を直接は知らないし、後から読んだ話もかなり忘れているので、松サリン事件とか村井刺殺とか、どういう文脈だったのかかなり忘れている。それらを知っていることを前提にした書き方で、単行のときは問題なかったんだろうけれど、いま読むとちょっとわかりにくい。 オウムに入るにあたり、肉体的な修行があったのが観念や理屈ばかりでないということで魅力だった、という著者の記述は、自分にもそういうのに惹かれる面があったのでギクリとさせられるとかいうのはある。そして、自分がどこかでちょっとちがう角を曲がっていたら、この人と同じ境遇になったかもしれない、という思いもある。が…… この文庫版へのあとがきを読んで、ぼくはこの人が「かろうじて活かされている」とか

    高橋英利『オウムからの帰還』:オウム内部、サティアンの様子などの記述はおもしろいが、まだ神様依存症らしい。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
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    RanTairyu 2012/04/06
  • バルガス=リョサ『小犬たち/ボスたち』:あぶなげない中短編集。社会問題に拘泥せず、着想の展開と書くこと自体の喜びで書かれている。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    小犬たち・ボスたち (1978年) (ラテンアメリカ文学叢書〈7〉) 作者:M.バルガス=リョサAmazon なんだかツイッターを見ていると、今日はバルガスリョサの誕生日なの?(追記:ちがった。先月末じゃん!) 記念でもう一冊。バルガス=ジョサ唯一の短編集(いまでもそうなのかな?)「小犬たち/ボスたち」。これもずいぶん昔から持っているなあ。 どの話もかっちりまとまっていて危なげがない。アイデア/ エピソードを中心に話を盛り立てていく。で、特に『ラ・カテドラル』や『緑の家』の社会派的なこだわりがないので(もちろんそれを敢えて読み取れといえば可能だし、訳者あとがきは「小犬たち」についてそれをやっているんだが)、重苦しさがなく、小説それ自体の楽しさが出ていて悪くない。それでもやはり、計算高い感じはするんだけど。 あと、書の訳者解説はおもしろい。ガルシア=マルケス論(ちなみにバルガス=ジョサは、

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    RanTairyu 2012/04/04
  • 楊『毛沢東大躍進秘録 』:うー、長い。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    毛沢東 大躍進秘録 作者:楊 継縄文藝春秋Amazon 大躍進の実態について、地方部のいろんな記録を漁って精度を高めたもの。もんのすごく分厚くて細かくて長い。各地の飢餓の実態、人肉の横行、人々の怒りと悲しみ、幹部たちの保身、記録や報告の改ざん、中央の無策と現実逃避、毛沢東の「指一のまちがい」強弁、そしてその一方での料輸出など読んでいてひたすら暗くなるしかないし、それをこれだけのにまとめた著者の努力は立派。大躍進分析の精度には大きく貢献したはず。 ただ一般読者(もちろん毛沢東信仰にはまってない人)で、少しでも中国史に関心のある人は、概略は知っての通り。大躍進のまったく目新しい部分が見えてくるということはない。資料としては労作で研究者向けかな。 毛沢東の大飢饉 史上最も悲惨で破壊的な人災 1958-1962 作者:フランク・ディケーター草思社Amazon 当は、しばらく前に邦訳の出た

    楊『毛沢東大躍進秘録 』:うー、長い。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
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    RanTairyu 2012/04/04
  • カプシチンスキー『皇帝ハイレ・セラシエ』:淡々とした側近の談話で紡がれる皇帝の晩年。おもしろさは太鼓判だが時代背景とその後の歴史は予習必須。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    皇帝ハイレ・セラシエ―エチオピア帝国最後の日々 作者: リシャルト・カプシチンスキー,山田一廣出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1986/03メディア: 単行購入: 1人 クリック: 84回この商品を含むブログを見る うーん。実におもしろいんだが…… これは発刊当時は、どういうふうに読まれたんだろう。皇帝独裁が終わり、軍政から社会主義政権になる過程で粛正前の密告合戦が始まった頃に原著は出ている。いま、アジスアベバに行くと Red Terror Museum がかなり最近に建設されていて、その後の社会主義時代の状況がいかに恐ろしかったかが結構如実にわかる。 書が取材されて書かれたのはちょうど軍政の終わりくらい。書は、軍政の恐ろしさと皇帝時代のひどい状態をあわせて描くことで、その後の粛正と弾圧の恐ろしい社会主義政府にお墨付きを与える機能を果たしたんじゃないか。 書は、エチオピア最後

    カプシチンスキー『皇帝ハイレ・セラシエ』:淡々とした側近の談話で紡がれる皇帝の晩年。おもしろさは太鼓判だが時代背景とその後の歴史は予習必須。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
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    RanTairyu 2012/04/03
  • バルガス=リョサ『継母礼賛』:雰囲気の盛り上げかたは見事。計算高さも鼻につかないし、短かくてホッとする。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    継母礼讃 (モダン・ノヴェラ) 作者: M.バルガス・リョサ,西村英一郎出版社/メーカー: 福武書店発売日: 1990/08メディア: 単行 クリック: 54回この商品を含むブログ (9件) を見る これをアマゾンで検索すると、関連書のところに継母もののエロ小説やらDVDやらがたくさん紹介されて閉口するんだけれど、基的にはそれらとそんなにちがうわけではない。ケツのでかい継母と、その夫と息子との淫靡な関係が、各種の絵画をはさみつつ古代ギリシャっぽい王さまとケツでか王妃、そしてその家臣との関係や女神の幻想やベーコンの絵の変な顔などと重ね合わされる。 でも、もちろん凡百のエロ小説よりずっと豊かで、その性的な生暖かい夢想の感覚が、音楽や味覚やウンコやその他様々な感覚を喚起しつつ、倒錯的なひっかかりなども利用しつつ塗り重ねられて、とても濃密な雰囲気を作り出しているのは見事。三者の関係もその中で非

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    RanTairyu 2012/04/03
  • カルロス・フエンテス『メヒコの時間』:反米と、近代VS伝統をむずかしく言い換えつつ自己正当化を試みた本だが、すでに古びて現代的な意味はないと思う。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    メヒコの時間―革命と新大陸 (1975年) 作者: カルロス・フェンテス,西沢竜生出版社/メーカー: 新泉社発売日: 1975メディア: ? クリック: 13回この商品を含むブログを見る 人生において、ずっと先送りにしていたものを何の理由もなくふと思い立って清算してしまおうとする時期がある。ぼくは最近、カルロス・フエンテス(そしてバルガス・ジョサ)についてそういう時期がきているようだ。 フエンテスは、ずっと昔から積ん読だった『聖域』を読んで、これはもう見切ったという気がした。で、『空気澄み渡る地』でその認識がだいたい裏付けられて、それでもう他のも恐るるに足らず、と思い始めて次々に処理している。 で、今日は『メヒコの時間』。これは駒場の生協で買って、四半世紀も棚で寝ていたことになるのか、と思うと感慨深い。原著は『脱皮』の後の1971年に出ていて、翻訳は1975年とえらくはやい。フエンテスが

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    RanTairyu 2012/03/30
  • 上垣外『ハイブリッド日本』:日本人は昔からあれこれ混血を進めてきました、という本。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    ハイブリッド日 文化・言語・DNAから探る日人の複合起源 (東アジア叢書) 作者: 上垣外憲一出版社/メーカー: 武田ランダムハウスジャパン発売日: 2011/08/26メディア: 単行購入: 6人 クリック: 206回この商品を含むブログ (1件) を見る 前にこの、朝日新聞の書評委員会で拾ってきたんだが、日人がいろいろ混じっているなんてあたりまえではないか、と思ってあまり興味を持てずに流してしまったのだけれど、ダイアモンドの『銃、病原菌、鉄』追加章を読んで、その後あれこれ見ていると、思ったほど当たり前ではないんだねー。そんなわけであらためて読んで見た。前よりはずっとおもしろく読めた。DNA の分析や言語の話についてもあれこれ出ていて、ダイアモンドのやつよりは詳しい。当然だけど。また、神話などについての記述もそこそこ詳しい。 やっぱり日人の起原の一部としては、白村江の戦いで負

    上垣外『ハイブリッド日本』:日本人は昔からあれこれ混血を進めてきました、という本。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
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    RanTairyu 2012/03/29