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ブックマーク / www.newsweekjapan.jp/column (13)

  • 嫌イスラームの再燃を恐れるイスラーム世界

    シャルリー・エブド誌襲撃事件は、世界を震撼させている。欧米諸国を、というより、世界中のイスラーム教徒を、だ。 フランス版9-11事件ともいえるほどの衝撃を与えたこの事件に対して、イスラーム諸国は即刻、テロを糾弾し、フランスへの哀悼を示した。フランスと関係の深い北アフリカ諸国や、経済的なつながりの強い湾岸諸国はむろんのこと、ほとんどの中東の政府、要人が深々と弔意を示している。エジプトにあるスンナ派イスラームの最高学府たるアズハル学院も事件への非難声明を出したし、欧米諸国から「テロリスト」視されているレバノンの武装組織ヒズブッラーですら、惨殺されたフランスの漫画家との連帯を表明している。 意地悪な見方をすれば、この事件がイスラーム教徒の「踏絵」と化しているともいえる。ちょっとでも犯人側をかばうような発言をして、今後吹き荒れるのではと懸念される欧米での嫌イスラーム風潮に巻き込まれて、「テロリスト

  • 政治家を育てる質問

    12月16日の衆議院選挙投票日。テレビ東京の開票特番「池上彰の総選挙ライブ」を担当しました。 放送中から思わぬ反響をいただき、テレビ東京にはいまも再放送やDVDの発売を求める声が寄せられているそうです。 テレビ東京の人たちはもちろんのこと、外部スタッフが総力を挙げて制作・放送したものですから、当然の評価とはいえ、その一翼を担った私も嬉しく思います。 いつも「いい質問ですね」が口癖の私としては、視聴者に「いい質問ですね」と言ってもらえる内容を目指したからです。 ただ、党首や候補者への私のインタビューは、ジャーナリストとして当然のことをしたまでで、これに関する評価は面映ゆいものがあります。 というのも、たとえばアメリカテレビ政治番組なら、政治家に対しての容赦ない切り込み、突っ込みは当然のことだからです。 日なら「失礼な質問」に当たるようなことでも、平然として質問をしますし、質問を受けた側

  • それでも日本は走り続ける

    中国は9月30日の中秋節から国慶節(10月1日)の8連休に突入、それが明けると休み前の反日デモが醸造した重苦しいムードから開放された。そして、日でも連休明けのメディアで話題のノーベル賞が、国際情勢に敏感な中国人ネットユーザーたちの間で注目を集めている。 こんな「フェーズの転換」は11月8日を「X-day」とみなしているだろう中国当局にとってありがたいはずだ。いや、これも計算済みだったのかもしれない。だが実際はノーベル賞を見つめるレベルの人たちは片時も先日の騒ぎを忘れておらず、ノーベル賞が証明する「日中国の差」をはっきり意識しているのだが。 それは一部の日人が想像するような単純な「酸っぱい葡萄」ではない。逆に彼らは数年前の民主活動家、劉暁波の平和賞受賞に歓声を上げた人たちで、「酸っぱい」どころか、先月の信じられないような暴動を苦々しく思っている。あわせてGDP世界2位のこの国に何が足

  • 日中領土外交のデッドライン

    11月8日。とうとう、世界中のメディアが注目していたX-デーが明らかになった。今秋、5年ぶりに開かれる中国共産党の党大会の開幕日である。この日を巡ってここ数年来、世界各国のメディアと中国政治ウオッチャーが数々の推測と憶測を重ねてきた。 今年の春、ちょうど直轄市である重慶市の党書記を務めていた薄熙来が腹心の裏切りによって失脚した頃、「今年の党大会はいつもの10月ではなく、11月にずれ込む」という噂が流れた。今年の党大会は中央委員会総書記の胡錦濤、そして温家宝らを含む中央の政治トップの大幅な交代が行われるため、その遅れは「人事の難航のため」と言われた。 だが夏あたりから、北京の主要な国営ホテルで10月中旬の予約受付がストップしていたことが明らかになり、それが「全国各地から集まる代表たちがこの頃に北京に集結するというサインだ」とみられ、10月中旬開催説が濃厚になっていた。ふたを開けたら11月8日

  • 新聞記事の意外な続報を知る

    今年5月、アフガニスタンの女子校で女生徒が集団で倒れた。女子が学校で教育を受けることに反対しているタリバンが、毒を盛ったらしい......。 こんな記事を新聞の国際面で見つけました。小さな記事ながら、「うーん、タリバンならやりかねない。なんということだ」との感想を持ったものです。 ところが、真相はそうではなかったらしいというのが、誌日版8月8日号の記事『少女集団中毒の不可解な結末』でした。 事件が起きたのは5月23日。アフガニスタン北部の公立女子校で、全校生徒約1200人のうち127人が卒倒したり、めまいや不安を訴えたりして病院に搬送されたというのです。「大半は数時間で回復し、自宅に戻ったが、毒物による症状と診断された」。 その後も事件は続き、4~6月で周辺地域の7校の女子生徒1000人以上が同じ症状を訴えました。 6月6日、アフガニスタンの国家保安局が容疑者15人を逮捕。この中に地元

    Uzi_FZ
    Uzi_FZ 2012/08/10
    アフガニスタンの女子校での集団食中毒は、タリバンの仕業ではなく「集団ヒステリー」だったとのこと。拷問による供述という点も、アフガニスタンの現状をあらわしてますね。
  • エジプト:やっぱり選挙は面白い

    6月24日、エジプト大統領選の結果が発表され、ムハンマド・ムルスィー自由公正党党首が勝利した。とりあえず、ほっと一安心である。 いや、筆者が自由公正党シンパだというわけではない(むしろ、「う~ん」)。大統領決選投票の前後からかなりきな臭い動きがあったので、それが大きな衝突や改革の後退につながらないかと懸念していたからだ。 何よりもまず、6月14日、決選投票開始の2日前に、現在政権を担う軍最高評議会が突然、昨年末に実施された人民議会選挙の無効を発表した。これにより、自由公正党が約半数、第二党でイスラーム主義政党の御光(ヌール)党が約四分の一の議席を占める人民議会は、解散。自由公正党は、せっかく得た与党の地位を失うこととなったのである。大統領決戦投票を前に、守旧派の軍が新興勢力たるイスラーム主義政党を潰しにかかった、と見える判断だった。 緊張が高まるなか、決選投票が終わるとすぐ一日後に、ムルス

  • 中国の人権問題を日本人が無視する代償

    今週のコラムニスト:李小牧 〔5月30日号掲載〕 彼に初めて会ったのは、数年前に東京の明治公園で開かれたイベントだった。歌舞伎町案内人として超有名な私がメインゲストとして挨拶するのだと思っていたら、最初にマイクを握ったのが彼で思わずむっとした(笑)。さらにこの人物はあろうことか、中国からの「高度な自治」獲得を訴えるウイグル人だった。 彼の名前はイリハム・マハムティ。外国に住むウイグル人を束ねる世界ウイグル会議傘下の日ウイグル協会の代表だ。漢族として中国教育を受けた私にとって、少数民族の「独立」を求める動きは分裂主義にほかならなかった。ただ日に20年住んで自由な報道に触れ、自分が中国で受けた教育はおかしいのではないかとも感じ始めていた。 イリハム氏のスピーチで一番印象に残ったのが、「何十万人というウイグル人女性が、漢族と結婚するため新疆ウイグル自治区の外に移住させられている」という話だ

    Uzi_FZ
    Uzi_FZ 2012/06/05
    ウイグル人やチベット人は「大都市でホテルに自由に泊まれず、宿泊するときにはホテルの近くの派出所に届け出る必要がある。」「『ウイグル人が中国人ではないことを中国自身が証明している』ようなもの」
  • イスラエル:国歌斉唱しない最高裁判事

    最高裁の判事が国歌斉唱しなかったことが、議論を呼んでいる。 いや、日のことじゃない。イスラエルで起きたことだ。 今年の2月末、最高裁新長官の就任式でイスラエル国歌「ハティクヴァ」が斉唱されたときのこと。イスラエル最高裁判事のサリーム・ジュブラーンは、立ち上がって敬意は表したものの、歌わなかった。中継のテレビカメラは、ずっと彼の唇に向けられていた。口パクすらなく、それは微動だにしなかったからである。 それがイスラエルで大問題となった。「けしからん」「解任しろ」という非難渦巻くなかで、「しょうがないだろう、彼はアラブ人なんだから」との意見もある。 何故ジュブラーンがイスラエル国歌を歌わなかったか。それは彼がイスラエル史上初めて最高裁常勤判事となったアラブ人だからであり、イスラエル国歌が「ユダヤ人としての魂が・・・シオンの地とエルサレムを乞い望む」と歌っているからである。 イスラエルには約15

  • 貴重な独占インタビューだが

    去年、軍事政権から民政移管になったミャンマー。民政とは名ばかりで、どうせ軍事政権の看板の付け替えにすぎないだろうと思われていたのに、このところの民主化の動きには驚くばかり。大統領が民主化指導者アウン・サン・スー・チー氏と会い、スー・チー氏が議会の補欠選挙に立候補することを認めたり、大量の政治犯を釈放したり、内戦が続いていた少数民族との停戦合意を結んだり、中国主導で進められていたダム建設を白紙に戻したり。 テイン・セイン大統領の改革は果たして物なのか。国際社会が注目する中、誌日版2月1日号は貴重な独占インタビューを掲載しています。 インタビューした記者は、大統領に対して、「この国を変えようと思った動機は」と尋ねています。その答えは、「平和と安定、そして経済発展を実現したいという人々の希望が根底にあるからだ」というもの。 「これらを実現するためには、国内の政治パートナーと良好な関係を築く

    貴重な独占インタビューだが
  • 北朝鮮のような3代世襲がアラブで難しかった理由

    大統領制、一党独裁制を問わず、息子に跡を継がせたいと思うのは、何も最近指導者が急逝した隣国だけに限ったことではない。 「共和制なのに王政みたいに世襲する」パターンを揶揄的に「ジュムルーキーヤ」と呼ぶ、と紹介したのは、現代シリア研究の第一人者、青山弘之氏である。アラビア語で共和制を表わすジュムフーリーヤと、王制を表わすマラキーヤを合わせた造語だが、11年前に30年間の治世の後逝去した父ハーフェズのあとを継いで大統領に就任した、シリアのバッシャール・アサド政権の誕生が、アラブ世界では最初だ。 金日成の死後、金正日へと正式に引き継がれたのがその四年前だから、北朝鮮のほうがアラブに少し先だって「ジュムルーキーヤ」が成立している。しかも、北朝鮮では三代目にまで引き継がれたというのに、アラブでは今年、二代目がバタバタと倒れた。エジプトではムバーラク大統領が息子ガマールを、リビアではカッザーフィ大佐がセ

    北朝鮮のような3代世襲がアラブで難しかった理由
  • 「金持ち優遇税制」というけれど

    アメリカ・ニューヨークで始まった「ウォールストリートを占拠せよ」の運動は、全米に広がりを見せています。格差社会アメリカの抱える問題が一気に噴出した感があります。 格差是正のひとつとして、オバマ大統領は、富裕層への増税を打ち出しました。このニュース、日の新聞を読んでいる限りでは、至極もっともな政策だと感じていました。アメリカの税制がおかしいから、これを直そうというのは当然だと思っていたのですが......。 誌日版10月5日号に、「富裕層に増税したいオバマの悲しい計算ミス」という題名の記事が掲載されています。これを読んで、意外な事実を知りました。アメリカ富裕層の所得税率が高いというのです。 「実はアメリカでは、最富裕層の所得税率は低所得の国民と比べて非常に高い。年間所得が100万ドルを超える国民が納めている連邦所得税率は平均29%強だ。所得が減るに従って税率は変化し、2万~3万ドルだ

    「金持ち優遇税制」というけれど
    Uzi_FZ
    Uzi_FZ 2011/10/15
    米国の所得税制は累進的であり、バフェット氏が秘書の方が税率が高いと言ったのは、主な収入が投資収益であるため。もし、投資への税金を上げると中間層に打撃を与える可能性があるという解説。
  • 春闘という茶番はやめ、労働市場を改革せよ

    「春闘」はもう死語になったと思っていたが、まだ健在のようだ。1月19日、日経団連の米倉弘昌会長と連合の古賀伸明会長が会談して春闘の交渉がスタートしたが、今ひとつ盛り上がらない。連合は「一時金を含めた給与総額の1%引き上げ」を要求しているが、傘下の組合には賃上げどころか雇用を守るので精一杯のところが多く、足並みはそろわない。 かつて春闘といえば国民的な大イベントで、3月には国鉄や私鉄のストライキで国民生活にも大きな影響があった。しかし今ではストライキもなくなり、賃上げもバラバラで、春闘は空洞化している。そもそも連合の組織率は全労働者の12%で、大企業の「正社員クラブ」といわれている。古賀会長は「賃上げで消費を拡大すれば経済も成長する」とぶち上げたが、自動車総連も電機連合もベースアップ要求は見送った。トヨタでさえ賃上げしない状況では、春闘はもう茶番でしかない。 大卒の就職内定率が7割以下と史

    春闘という茶番はやめ、労働市場を改革せよ
  • 大型店の規制強化で利益を得るのは誰か | エコノMIX異論正論 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

    大畠章宏経済産業相は7日、全国商工会連合会などと会談し、「大型店の規制が緩和されて、中小の商店がさびれた。このまま放置すると地域社会が崩壊する」と述べ、大型店の出店規制を強化する方針を示した。「小泉改革で格差が拡大した」という民主党の宣伝が嘘であることは周知の事実だが、同じレトリックが、今度は「規制改革で地域が崩壊した」と装いを変えて出てきたわけだ。 大型店の規制が、小泉政権によって緩和された事実はない。大規模小売店舗法(大店法)は2000年に廃止されたが、その代わり同じ年に大規模小売店舗立地法(新大店法)ができ、「都市計画」の観点から規制することになった。旧大店法ではスーパーマーケットの中心市街地への立地を主として規制していたのに対して、新大店法では郊外型ショッピングセンターが規制対象になることが多い。 規制の理由も、既存の小売店の営業への影響を理由にすることはWTO(世界貿易機関)違反

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    Uzi_FZ
    Uzi_FZ 2010/10/08
    シャッターの降りた店を住居としてつかっている人を何とかする仕組みを作らないと、最低限のスタート地点にもたてないような気がします。
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