先日、東海地方に住む古希を過ぎた母と電話で話していると、何気なく筆者にこう切り出した。「もう今年は運転免許を返納しようかと思ってるんだよ。わたしより少し上の高齢者の事故が多いしね」― 淡々とした口調には、筆者に心配をかけまいという心遣いがにじみ出ていた。クルマで外出するたびに楽しい思い出を電話で報告してくれていた母のことを考えると、複雑な気持ちになった。しかし、高齢者による自動車事故のニュースを見聞きするたび、筆者も不安を覚えていただけに、「そうだよね」と同意するしかなかった。 地方の大半の公共交通機関は、都市部ほど利便性が高くない。母の住む地方ではバスが1時間に2本通る程度。スーパーに買物へ行くにも、バスならマイカーの倍の時間をみておく必要がある。しかも、買い物をした後で重い荷物を持って帰るのも大変。地方で生きていく上でクルマは生活必需品なのだ。 特に母は普段から習い事で外出する機会が多