生まれて初めて乗った飛行機は、アエロフロートだった。大学院の修士課程をでる前の3月、わたしは一人で卒業旅行にでかけた。まだ旧ソ連の時代だ。旅行の行き先はドイツとスペイン、そして英国。モスクワ経由でフランクフルトに向かい、ドイツ中部の家々の屋根の色を見下ろしたときの印象は、今でも鮮明だ。ドイツでは父の元・部下で、当時フランクフルト近郊の現地法人で働いていたNさんに、いろいろとお世話になった。スペインでは、マドリードにあった父の会社の取引先の方が一緒に夜、食事をしてくださった。今考えると、いくら取引先のキーマンの息子だとは言っても、取るに足りぬ生意気な若造のお相手をしてくれた訳だ。まことに頭が下がる。 行く先々で聞かれた質問が一つあった。「なぜ、お父さんの会社に行かないのですか?」という質問だ。ドイツでもスペインでも現地の人に聞かれた。わたしにはむしろ、「へえー、ヨーロッパ人って、そういう考え