「予想昇給率」と聞いて、これが退職給付会計で用いられる専門用語であると知る人はそれほど多くないだろう。平成27年3月期の有価証券報告書「退職給付債務等の計算に関する事項」において、新たに注記が求められた項目(※1)である。予想昇給率という言葉からは、給与の上昇割合を表す指標、といった漠然としたイメージを持つことができるが、A社とB社の予想昇給率を比較し、予想昇給率が高いA社の方が、退職金や給与の水準が高いと考えるのは、実際のところ、必ずしも正しいとは言えない。有価証券報告書は、投資家をはじめとした企業の様々なステークホルダーに対し、適切かつ正しい情報を伝えるためのツールであり、また給与に関する情報は、企業分析における重要な要素の一つであるため、これについて整理をしてみたい。 まず、予想昇給率という言葉を正しく理解するためには、退職金額算定の仕組みから整理しておく必要がある。主な算定方法とし
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