本稿は経済学のフレームワークの中で、個人レベルの社会資本の労働者の賃金決定過程における役割を考察した。労働者の個人属性のみならず、企業、労働市場も視野に入れたモデルを応用し、推定を行った。データは、家庭訪問によるインタビュー調査で集めた中国総合社会調査 (China General Social Survey 2008)の個票データを用いた。分析結果によれば、学歴、職歴と同じように、個人のソーシャル・キャピタルが賃金に正の影響を及ぼすことが分かった。そして、ソーシャル・キャピタルの利用に対する意識 (attitude)と、ソーシャル・キャピタルの質も重要であることが示された。さらに、男女別で比べると、男性のほうがソーシャル・キャピタルの効果が大きいことが明らかになった。政策含意では、個人のソーシャル・キャピタルの構築は賃金の上昇につながるが、男女間にソーシャル・キャピタルの効果の格差が存在