今週のコラムニスト:スティーブン・ウォルシュ [6月11日号掲載] 私が初めて日本に来たのは1987年、蒸し暑い夏の盛りだった。最初に覚えた日本語は「あっちー!」。辞書には載っていないが、誰もが分かりやすいジェスチャーとともにつぶやいていたから、すぐに意味を理解して覚えてしまった。 まだ「クールビズ」が始まっていない時代だったから、ビジネスマンは水着とビーチサンダルが似合いそうな炎天下にネクタイを締め、背広を持ち歩いていた。日本人が一様にイギリス人のような格好をしていることに、私はひどく失望した。しかもスーツ姿こそビジネスパーソンのグローバルスタンダードだと思われていたから、私も同じ服装をしたほうがよさそうだった。あっちー! 小泉政権が「クールビズ」を提唱したのは2005年。おかげで大勢のサラリーマンが地獄のように不快な暑さから解放されたが、相変わらずネクタイ着用を余儀なくされている人も少