2008年に国民党が政権に復帰し、馬英九政権が成立して以来、中台間の経済・社会交流は拡大の一途をたどってきた。同年7月に始まった中国人観光客の訪台は、この流れを象徴する動きである。当初、一部都市の住民に限って開放された台湾への団体旅行は、居住地要件が緩和、さらには撤廃されるとともに急速に拡大した。2011年からは、居住地制限付きで個人旅行も解禁されている。 図1 には、台湾への来訪者の国別構成の推移を示した。2010年以降、中国からの来訪者数は日本人を上回り、2012年には延べ259万人に達した。 大量の中国人観光客の出現は、台湾の観光業・小売業にとって、またとない好機である。実際、ここ数年の台湾では、ホテルの建設・改装ラッシュ、土産物の売り上げの急拡大といった中国人観光客の経済効果が広がっている。 他方で、台湾のメディアでは、中国人観光客の急増とともに、極端な低価格で団体ツアーを受け入れ