立正大学教授 三浦佑之 今年は『古事記』が編纂されて1300年にあたるというので、新聞や雑誌はさまざまな特集を組み、書店には『古事記』に関する本がたくさん並んでいます。 7月21日からは、「神話博しまね」というイベントが出雲市を中心に開催されますし、『古事記』にゆかりのある宮崎県、奈良県などでも、さまざまな催しがあるようです。 また、来年のことになりますが、5月には60年に一度の出雲大社の遷宮があり、秋には、伊勢神宮で20年に一度の式年遷宮がとり行われます。『古事記』への関心は、しばらく続くのではないかと思われます。 壬申の乱を経て皇位に就いた天武天皇は、国家の根幹として、自分が正しいと考えた神話や歴史を、稗田阿礼という側近に覚えさせました。 しかし書物にならないままに時代は移り、30年ほど経った711年9月のこと、稗田阿礼が暗唱する、天武天皇が直々に教えた正しい伝えを書物にしな