路地を歩くと、そこかしこから「ガガガッ」と金属を削る音が聞こえてくる。東京都大田区南部の住宅地には、一階が作業場、二階が住居の町工場が点在する。「羽田上空の飛行機から図面を投げれば、着陸した時には製品ができている」と評されるほど技術力の高い工場が多い。「蒲田の町工場」ともいわれる、都内有数のものづくりの集積地だ。 「冗談じゃねえ。大企業ばかりもうけさせて」。衆議院解散の前日の二十日、地域の一角にある工場で木戸群市さん(69)が憤った。横ではテレビから「円相場は下落し、一ドル一一八円台後半で取引されました」とニュースが。「円安のしわ寄せは、わしらがかぶっている」。木戸さんが吐き捨てるように言った。 木戸さんの工場では、輸入したアルミなどの原材料から工作機械のネジや金具を作っている。円安のあおりで原材料費は値上がりを続ける。例えば研磨用ネジでは、第二次安倍政権発足前の一本六千五百円が、八千円に