ガソリンスタンドではディーゼル油が不足し、工場は操業停止に追い込まれ、家庭の電気が突然消える――信じがたいことだが、こんなことが中国の一部で実際に起きている。それも政府の政策が原因で。中国政府が今年で最後の年を迎える5カ年計画のエネルギー強度(GDP1単位当たりのエネルギー消費量)の削減目標を達成しようと、ラストスパートに乗り出したためだ。 中国政府は05年、2010年までにエネルギー強度を20%削減すると宣言した。燃料をしこたま使う工場や非効率的な石炭火力発電所、小さなセメント工場を閉鎖したことは大きな成果だったと、北京のWWF(世界自然保護基金)で気候変動を専門とする王濤(ワン・タオ)は指摘する。ただし、それも08年秋に金融危機が起きるまでのことだった。 「残念なことに、その後は政府の景気刺激策の多くがインフラ整備、特に鋼鉄業やセメント産業のようなエネルギーを食う重工業に充てられた。そ
メキシコ、カンクンで開催されていた気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)が閉幕した。結果については、「緑の気候基金」、温暖化の影響を受けやすい国々の対策強化、途上国も温室効果ガスの削減に取り組むといったことが挙げられないわけではない。だが事実上拘束力はなく、徳目という以上のものではない。今回のCOP16で重視されたのは、京都議定書について、その期限切れとなる2013年以降も継続するかという問題だった。これは来年に先延ばしになった。実質的に見るならCOP16には成果はなかった。 そのことで、国際社会から菅首相と日本が非難されることになった。国際社会にソフトパワーを維持したい日本には大きな打撃となってしまった。 日本としては、COP16に成果がないことで安堵した面がある。先進国だけに温室効果ガスの削減を義務づける京都議定書が継続されれば、先進国といっても大量の温室効果ガスを出す米国
今回は、近年「シェールガス革命」と呼ばれ、脚光を浴びている米国を中心としたシェールガス開発が、なぜ「革命」とまで呼ばれるのか、そして、このシェールガスがクリーンエネルギー産業に与える影響を分析します。 ここ数年、米国を中心に、従来の天然ガスの採掘技術では回収が難しい非在来型天然ガスの一種である、シェールガスの開発が活発化しました。 シェールガスとは? シェールガスのシェールの語源である頁岩(けつがん)とは、泥土が堆積してできた泥岩のことで、シェールガスとは、この泥岩である頁岩に閉じ込められた天然ガスの呼称です。 それに対して、従来技術で生産されるいわゆる在来型天然ガスは、砂が堆積してできた砂岩の中に埋蔵されています。 シェールガスと在来型の天然ガスの大きな違いは、その埋蔵されている場所である頁岩と砂岩の浸透率の違いによります。浸透率とは、堆積岩中の流体の流れやすさを示し、浸透率が高いという
近年、エネルギー産業に甚大な影響を与えたいくつかの出来事が発生しました。英BPによるメキシコ湾沖原油流出事故と、米国を中心とした非在来型天然ガスと呼ばれるシェールガスの開発です。 今回と次回の2回の連載にわたり、これらエネルギー産業のマイルストーン的出来事がクリーンエネルギーに与える影響を分析します。 今回は、BPの原油流出事故です。 BP原油流出事故と新しいエネルギーコスト方程式 まず、エネルギーのコストについての考え方を整理します。エネルギーのコストを考える際に、一般消費財の様に、生産コスト、流通コスト、販売コストを合計した供給コストだけでは、単純にコスト比較することはできません。 つまり、供給コストだけをとって、化石燃料がクリーンエネルギーよりコストが低いとは言えないのです。 CO2が地球温暖化の原因であることが科学的に証明されている現在、CO2は社会にとってのコストですから、CO2
国連の生物多様性条約・第10回会議(COP10)が終わった。最終の追い上げ報道からすると案外いけるかもしれないとも思ったが、実際にABS(Access and Benefit Sharing:遺伝子資源へのアクセスと利益配分)議定書ができたらしいと知ると、それはそれで驚きの感もある。どういう交渉があったか知らないが、たいしたものだ。議定書はこれからはNAGOYAと呼ばれることになり、KYOTOに並ぶだろう。 生態系保全目標の通称「愛知ターゲット」の採択については実効性についてはどうかと疑問に思うが、どちらかというときれい事でまとまりやすい。これに対してABSのは実利が関わってくるだけに厳しいものがあるだろうと見ていた。もっとも南米などの参加国ではすでに国内法でABSを整備しているので、それらを空言としないためになんらかの国際的な基盤は必要になる。それなりのご事情もあっただろう。 実際にどの
大規模な油田を持たない北アフリカ唯一の国であるモロッコはこの何十年もの間、血眼になって砂漠を探し続けてきた。そのモロッコが昨年、ついに豊かな資源を見つけた。太陽だ。 中東の原油とロシアの天然ガスに長く頼ってきたヨーロッパは最近、サハラ砂漠に注目している。2050年までにヨーロッパのエネルギーの15%が北アフリカと中東の風力、太陽熱発電で賄われ、モロッコが北アフリカ最大の太陽熱エネルギー供給元になり得る、と専門家は考えている。 きっかけは08年の世界的な原油高騰。エネルギーの多くを輸入に頼るモロッコでは調達コストが2倍近くに跳ね上がり、国王モハメド6世は代替エネルギー開発を最重要政策にすると決定した。投資推進の法的枠組みも導入された。 モロッコはヨーロッパにも近い。スペインとの距離は14キロで、エネルギーパイプラインでつながっている。現在はスペインからの一方通行だが往復でも使える。2020年
第3部 グローバルビジネス最前線 近年クリーンエネルギー産業は飛躍的に成長したものの、競合相手である化石燃料に対して価格競争力で見劣りしていることは、前に述べた通りです。 そして、この現状を打開するために、国境を超えたグローバルスケールで、クリーンエネルギーの競争力を高める試みがなされています。 言い換えると、世界各国がコラボレーションしながらクリーンエネルギーという新しい“パイ”作りに励んでおり、現在そのパイの大きさは1620億ドル(14兆5800億円)に達しています(第5回連載参照)。 そして、このパイを各国協力しながら、さらに大きくしようと共同作業をしている一方、出来上がったパイをどの様にスライスし、誰がどの部分をどれだけ食べるのか、既に列強各国がテーブルについて、ナイフとフォークを持って、駆け引きを始めているのです。 今回は、グローバルビジネスであるクリーンエネルギー産業の持つ2つ
前回、クリーンエネルギー技術の開発から商業化までのプロセスとその流れの中で、誰が、どの様な性格の資金をエネルギーベンチャー企業に提供しているのか解説しました。 ITとETでは産業構造が全く違う このクリーンエネルギー技術開発の特徴を理解すると、前回指摘したベンチャー企業のM&A(合併と買収)によって事業を拡大してきた大手IT企業が、クリーンエネルギー市場参入に当たって、これまでと何か違う戸惑いを感じる理由が見えてきます。 今回は、ITとET(エネルギー技術)の融合を試みる際に、IT企業が直面する3つの挑戦について説明します。1つ目は、ITとETの商業化のプロセス自体の違いです。 クリーンエネルギー技術は、ステップ・バイ・ステップつまり、“石橋をたたいて渡る”手法によって技術をスケールアップしながら検証するため、商業化までかなりの資金と時間が必要となることは、前回説明しました。 一方、ITを
今回はクリーンエネルギー産業の特徴を分析します。近年、産業としてのクリーンエネルギーは、新興産業として目覚ましい成長を遂げています。 この6年間で投資額は約4倍に膨れ上がった 産業の規模を確認するに当たって、1つの指標として、2004年以降世界のクリーンエネルギー産業に投融資された金額を見てみます(図20)。 Bloomberg New Energy Finance によりますと、世界のクリーンエネルギーへの投資・融資額の総額は、2004年は460億ドル(4兆1400億円)でしたが、2009年は若干世界同時不況の影響は受けたものの、それでも2007年を上回る1620億ドル(14兆5800億円)に達しました。 この6年間で、クリーンエネルギー産業に投入された資金規模が約4倍に膨れ上がったのです。短期間に、この規模で、これだけ高い成長を遂げた産業が過去あったでしょうか?
鋳造・鍛造の優れた職人がいた堺では、戦国時代から江戸時代にかけて鉄砲の製造が盛んに行われた。明治時代になると、鉄砲の製造技術を転用して自転車の部品がつくられるようになった。 現在、堺市にはシマノをはじめ数多くの自転車部品メーカーが存在し、出荷額で日本の自転車製造、部品製造の約4割のシェアを占める。 自転車が「エコ」な乗り物であることは言うまでもない。堺市は、CO2排出量削減のための重要な施策の1つとして「自転車を生かしたまちづくり」を進めている。 市民も、堺市が自転車のまちであることを十分に自覚している。8月28日、堺市役所に隣接する堺市総合福祉会館で「堺から始める低炭素まちづくりワークショップ」が開催された。堺市役所の環境都市推進室が主催したもので、約20人の市民が参加。堺市のCO2排出量削減のためのアイデアを出し合った。ワークショップの中でも、「もっと自転車に乗ろう」という声が数多く聞
英南東部サネット地区沖の海上に世界最大の洋上風力発電所が完成し、23日に式典が行われた。同発電所は100機のタービンで計300メガワットを発電、20万世帯の電力をまかなえる計算だ。 英国の風力発電量は世界8位(2009年、日本は13位)だが、洋上に限れば世界一で、サネットを含めた発電量は約1300メガワット。ヒューンエネルギー・気候変動相は式典で「わが国は島国であり、風と波、潮流(のエネルギー)を最大限利用すべきだ」と述べた。 建設に当たったのは、スウェーデンの電力大手バッテンフォール。発電所は最も近いところで海岸から12キロで、約4千のサッカー場が入る広さの海域に風力発電のタービンを設置した。今後4年間で同施設に最大341機のタービンを設置する計画だ。(共同)
気になる記事をスクラップできます。保存した記事は、マイページでスマホ、タブレットからでもご確認頂けます。※会員限定 無料会員登録 詳細 | ログイン Carol Matlack(Bloomberg Businessweekパリ支局長) 米国時間2010年9月9日更新「 Sahara Solar Energy Could Power Europe Inc.」 サハラ砂漠には毎年、欧州の大半の地域に比べて2倍もの日光が降り注ぐ。欧州連合(EU)は今後10年以内に電力の20%を再生可能エネルギーで賄うことを目指している。そこで、北アフリカのサハラ砂漠一帯に太陽熱発電施設を建設し、地中海に埋設した送電線を通じて欧州に電力を供給する計画を検討している。 2009年、欧州の有力企業が集まり、「デザーテック・インダストリアル・イニシアチブ(DII)」と呼ぶ企業連合体(コンソーシアム)を結成した。サハラ砂
例えば、電気を作るために太陽光や風力を利用しても、燃料としてはCO2を全く出しません。 一方、バイオマスは燃料として燃焼される時にCO2が発生するのですが、バイオマスとして育成される段階でCO2を吸収するため、排出するCO2を相殺するカーボンニュートラルと見なすことが一般的な考え方となっています。 2つ目の特徴は、エネルギー源が自然界のものですので、太陽光が地球に降り注ぎ、風が吹き、川が流れ、波が打ち寄せ、マグマが活動し、植物が育つ限りにおいては、その資源は無尽蔵にあり、何度も再生が可能です。つまり、無限のエネルギー資源なのです。 そして3つ目の特徴として、これらのエネルギー源は自然の恵みですので、太陽、風、波、地熱などは燃料としてはコストがかかりません。 つまり燃料コストがゼロなので、石油や天然ガスのように価格が乱高下することもなく、過去の石油ショック時の様に、燃料価格の高騰によってイン
このエネルギーの主役交代をエネルギー革命と呼ぶことにします。では、エネルギー革命は、なぜ起きたのでしょうか? それは、その時々の時代背景がエネルギーの世代交代を誘引したのです。分かりやすいように、エネルギー革命の時代の変遷を概念的に図式化したのが図6です。 18世紀に英国で始まった産業革命によって、製鉄業を中心とした工業化が起こります。同時に生産規模の大型化が進み、エネルギーの需要が大幅に伸びました。 ジェームズ・ワットが引き起こした石炭革命 従来の木材を燃料としていたのでは需要に追い付かなくなり、英国内に豊富にあった石炭が注目され、開発が活発化しました*5。 さらに、ジェームズ・ワットの蒸気機関によって石炭の利用が急速に拡大し、19世紀は石炭の世紀と呼ばれるようになります。つまり、石炭へのエネルギー革命は、産業革命が引き金となったのです。 そして19世紀半ばに、米国ペンシルベニア州で近代
ソーラー・風力・バイオマスなどに代表されるような、基本的に二酸化炭素(CO2)の排出がほとんどなく、再生可能な次世代エネルギーのことをこう呼んでいます。 私は、エネルギー産業の首都と呼ばれる、米国のテキサス州ヒューストンで、クリーンエネルギーの事業開発・事業投資に従事しています。こちらで仕事をしていて、日本の存在感の希薄さを痛感させられています。 日本は世界有数のハイテク産業の集積地ですから、日本人としてクリーンエネルギー分野でも世界的な地位をある程度確立していると考えたいものです。 しかし、日々当地のクリーンエネルギーのベンチャー企業、ベンチャーキャピタリスト、コンサルタントなど業界の人たちと話をしていても、次のような質問が飛んで来ることはまずありません。 「日本の環境政策は?」 「日本の戦略的なクリーンエネルギー分野は?」 「日本で力を入れているグリーン技術は?」 「パートナーとして面
古典的かもしれないが、今世紀にグローバルなビッグビジネスになるのは何か、と考えたとき、 世界的に需要に対して供給が圧倒的に足りなくなるものであろうと思う。 つまり1に水、2に食料、3にエネルギーではないかとやはり思うわけである。 中でも、水には個人的に以前から興味があったので、仕事で忙しい中睡眠時間を削って、先々週末から水ビジネスに関する本を何冊か読んでみた。 中でも一番、分かりやすくてとっつきやすく、日本企業が水ビジネスに関わる上で重要な課題がカバーされてるのは次の本だった。 この本を読んでから、他の専門的な書籍を読むと、短時間で格段に理解力が上がる。 対談方式が苦手でなければ、この本はお勧め。 簡単に読んで勉強になったところをピックアップしてご紹介しようと思う。 1) バーチャルウォーターという考え方:日本は食糧自給率が低いからこそ国内の水を使わずに済んでいるらしい 水というと、つい飲
(2010年7月26日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 米上院の民主党指導部が気候変動対策法案を可決させる努力を打ち切った。民主党は、既に下院を通過したものに似た包括的なキャップ・アンド・トレード制度の計画だけでなく、電力会社を対象にした比較的穏当な法案の成立も断念した。 上院では何らかのエネルギー法案が成立する可能性が高いが、これでは温室効果ガス排出の抑制に向けて前進した振りをするのが関の山だろう。 上院可決を諦めた民主党指導部 今回の可決断念により、1997年の京都議定書に始まって昨年12月のコペンハーゲンでの気候変動サミットでクライマックスを迎えた物語は完結することになる。 長らく開催が待たれていたコペンハーゲンの会議では、目に見える成果を上げられなかった京都議定書のシステムに代わる、より効果的な新しい枠組みを作ることに各国政府が期待を寄せたが、結局は手ぶらで帰ることになった。 大
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