会話の最中には気にならないが、我々のキャッチボールは思った以上に不恰好なものだ。録音して聞き返してみるとわかるが、いい間違いをしたり、口ごもったり、省略するべきでない単語を省いてしまっていたり、よくもこれでまともなコミュニケーションがとれているものだと感心する。お互いの脳内でうまいこと補完が行われているのだろうな。考えながらしゃべっているのだから、どうしてもこういうことは起こってしまうわけで、いちいち気にしていたのでは会話などできない。 しかし物語の登場人物は基本的に言い間違いをしないもんだ。酩酊状態にあることを示すために不明瞭な調子でしゃべったり(例:酔ってらんかいないれすよ?)、キャラクタの本心を読者に知らせるためにうっかりしゃべりすぎたり(例:だって俺はお前のことが好……いや、なんでもない)、フロイトの言う錯誤行為を使ったギャグとか(例:先輩のことを笑いに……じゃなかった心配して来た