――小熊英二さん『〈民主〉と〈愛国〉』を語る(上) 『七人の侍』をみて、「これが戦後思想だな」と思った ■「つくる会」に対抗したかった ――小熊さんにこれだけの大著を書かせた動機はなんだったのですか。 ★前著の『<日本人>の境界』で戦後沖縄の復帰運動を書いたこととか、いろいろありますけれど、一つには90年代に「新しい歴史教科書をつくる会」が出てきたり、加藤典洋さんの『敗戦後論』をめぐる論争が盛り上がったりしたことです。私にいわせれば、あれは「戦争の歴史認識を論じる」というかたちをとって、「戦後という時代をどう考えるか」を論じていたといってよいと思う。「戦争」は「戦後」のネガであるわけですから、「あの戦争をどう位置付けるか」は、「戦後日本をどう位置付けるか」とイコールであるわけです。 しかし当時の私の知っている範囲から見ても、議論の前提になっている「戦後」の認識が間違いだらけだということが、