わが国において「自由」という言葉が湯水の如く使われているため、その語意について疑いの目が向けられることは少ない。必要さえ見当たらない。 おおよその解釈は、「自らの選択で行動あるいは思考することができる状態、しかしそれは他人に迷惑をかけない範囲でのこと」、または単に「束縛や強制を受けていない状態」である。 これは近代とともにわが国に定着した言葉であるが古来はほとんど使われた形跡がなく、あったにせよ今とはだいぶ違う意味で使われていた。古くは日本書紀に見られ後の徒然草にも現れる「自由」は、「傍若無人」「我儘勝手」といった悪い形容に使われるのみであった。 ひとまず話を近代以降に絞るとする。 「生」に対し「死」があるように、「天」に対し「地」があるように、「自由」の対極には「不自由」がある。つまり自由が存在するためには不自由がなければならない。 現実の不自由が支配や拘束や虐待などの形でまず存在し、そ