王貞治の一本足打法に、野茂英雄のトルネード投法…。野球を始めた子供の頃、憧れの名選手のまねをしてみたことはないだろうか。美術の世界でも、それは同じ。海外の美術館では日曜画家や美術を学ぶ学生らが、名画の前で絵筆を握る姿が珍しくない。こうした他人の作品を忠実にまねて描く「模写」は絵画の上達にきわめて有用とされるが、日本の大半の美術館ではご法度。その背景には美術館側の事情だけでなく、戦後になって“オリジナリティー重視”へと大きく変容した美術教育が色濃く影響しているようだ。本物を見る大切さ 7月26日午後、印象派を代表する画家ピサロの回顧展「カミーユ・ピサロと印象派」が開催中の兵庫県立美術館(神戸市中央区)。ピサロを中心にモネ、ルノワールなどの名画約100点が並ぶ館内で、約40人の高校生がそれぞれ気に入った絵の前に陣取ると、スケッチブックを広げ始めた。 ピサロ展の特別プログラムとして開かれた「高校