一般に「日本型経営」と呼ばれる経営の形態があります。終身雇用と年功序列を柱とした、平等主義的かつ家族主義的なコーポラティズムの企業経営版です。戦中から高度経済成長期までの日本経済発展の基盤となった一方で、最近では、日本の経済的停滞の原因であるとして批判の対象になることもしばしばです。 そうした評価の妥当性はともかく、時折、こうした現代日本に特徴的な企業文化は、文字通り日本の「文化」であり、ずっと昔から連綿と続いてきた伝統なのである、という主張をみかけることがあります。こうした主張の行き着くところは、そうした「文化」は日本と日本人の本質に深く根ざすものなのだから、変えることは出来ないし、無理に変えようとするとかえって有害だという、諦念にも似た運命論です。 でも、実際のところ、今でこそ私たちが親しむ諸制度は、本当に伝統と呼ぶほど長い歴史を持っているのでしょうか。著者は、この問いに対してはっきり