ニューヨークの競売会社サザビーズのオークションで今年5月、現代美術家、村上隆の絵画「NIRVANA」が100万ドルで落札された。1億円を超える高額で作品が売買されるという、日本人としては前人未到の成功。自らその裏側をつづった新著『芸術起業論』(幻冬舎)が話題だ。今秋には東京・広尾にギャラリーもオープンする。“常識”を次々と超越する村上。その真意は、どこにあるのか? 世界で認められた日本人アーティストは少ない。その理由を本書は冒頭で言い切る。「欧米の芸術の世界のルールをふまえていなかったから」 アートの主流である欧米で勝負するため、村上は欧米の美術史や文脈の中で、自らの作品の文化的な背景や意味を説明した。2001年から昨年にかけて、米仏で企画展も開催、アニメや漫画といった独自のサブカルチャーを相対化し、日本文化として世界へ広めた。 その過程が本書で明らかにされる。業界の構造を知り、戦略を練り