これは「刑法学ブログ」ですので、すこしむずかしい専門的なことも書いておきます。 心身喪失者等医療観察法は、心身喪失等の状態で、殺人、放火、強盗、強姦、強制わいせつ、傷害といった重大な他害行為(「対象行為」)を行った者に適用されることになっていますが、行為者が幻聴妄想等に基づいてこれらの行為を行ったときは、自分がやったといわれる行為については何も憶えていないとか、場合によっては、自分の身に降りかかる侵害を払いのけるためにやったと思い込んでいるような場合があり得ます。 これらの場合には、行為者には責任能力がないので刑罰は科されませんが、そのまま医療観察法上の「対象行為」があったと判断してのよいのかという問題が生じます。 従来は、行為者が現にこれらの重大な他害行為を実際におこなっているのだから、それだけで「対象行為」があったと判断して、医療観本法による指定入院機関への入院や通院等の処分をすること