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ブックマーク / knakayam.exblog.jp (25)

  • ( 遺影 ) | 中山研一の刑法学ブログ

    皆さまご了知のことと存じ上げますが 父 中山研一は その後病状好転することなく 7月31日夜に永眠いたしました 肺がんでした 病に臥してなお 原稿を書きたい 勉強したい もう一度家へ帰りたい と願っておりましたが 叶いませんでした このブログも気にかけておりましたので 当人になり代わりお知らせいたします 長きに亘りご愛読賜りましたこと 厚く御礼申し上げます 長男    一郎 長女    葉子

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  • 中国の死刑の制限 | 中山研一の刑法学ブログ

    中国は、アメリカと並ぶ死刑大国であり、死刑判決数も死刑執行数も突出して多いことは、すでに周知の事実になっています。アムネスティ・インターナショナルの調査によりますと、2009年、アメリカの死刑執行数は52人で世界5位、日は7人で10位であるのに対して、中国は1718人で、ダントツの1位です。 しかも、在日の中国人専門家によりますと、当の執行数ははるかに多く、2000人から1万5000人位もあるといわれ、中国政府はその数字を公表せず、むしろ最高の国家秘密になっているのが現状です。しかし、さすがに中国でも、国内外の批判に答えるために、最近の刑法改正で、死刑の罪名の削減が行われました(王雲海中国の刑法改正と死刑制度の変更」法律時報83巻4号118頁、2011年4月)。その要点は以下の通りです。 1.中国の1979年の刑法典では、死刑罪名は28個であったが、1997年の刑法典では68個に増加

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  • 米イリノイ州で死刑廃止 | 中山研一の刑法学ブログ

    では、少年事件に関わった共犯者3人全員に最高裁判所が死刑判決を下したことを,1面トップに「元少年3人死刑確定へ」と大きく報道した3月11日の朝日新聞朝刊が、その8面の国際欄の片隅に、「米イリノイ州死刑廃止」という小さい記事を乗せています。目立たないので、あやうく見過ごすところでした。前者にも問題がありますが、ここでは、後者の問題について、TBSニュースの以下の記事を紹介しておきます。 「米・イリノイ州で死刑制度廃止へ アメリカ・オバマ大統領の地元であるイリノイ州で、9日、死刑制度を廃止する法案が成立しました。『これは私が知事として下す決断の中で最も難しいものでした』(米イリノイ州 クイン知事)。イリノイ州のクイン知事は9日、死刑廃止法案に署名、イリノイ州では死刑が廃止されることになりました。 オバマ大統領の地元であるイリノイ州では2003年、死刑確定囚の冤罪が発覚したことから当時の知事

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  • 民法改正反対意見 | 中山研一の刑法学ブログ

    民法は私の専門ではありませんが、最近問題になっています債権法改正に対する反対意見書(加藤雅信・上智大学教授)の中に、注目すべき指摘を発見しましたので、全面的な賛意を表するとともに、とくに以下の点を紹介しておきます。 「法制審議会民法部会は、“行政機関職員を審議委員にしない”とする平成11年の閣議決定に違反している。さらに民法のユーザーである民間出身の委員が4分の1以下であり、また、異論を有するであろう者を排除する等、審議会の構成としての公正さに欠けるところがある」(法律時報83巻3号74頁)。 そこで、さっそく問題の「閣議決定」を参照しましたら、たしかに「審議会の整理合理化に関する基計画」(平11・4・27閣議決定)の「指針」の中に、審議会等の委員の選任について、「府省出身者の委員の任命は、厳しく抑制する。とくに審議会の所管府省出身者は、当該審議会の不可欠の構成要素である場合、または専門

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    nisoku2 2011/03/02
  • ジュゴン訴訟 | 中山研一の刑法学ブログ

    この訴訟は、沖縄の辺野古の周辺海域に生息している稀少価値のある魚「ジュゴン」がアメリカ海兵隊の基地の建設によって被害を受けるとし、そのことが米国の国家歴史保全法に違反しているとして、2003年9月に日米環境保護団体によって提訴され、2008年1月にサンフランシスコ連邦地裁が、被告の米国防長官に対して、「ジュゴンへの影響を評価するための追加情報を示せ」とする判決を言い渡したというものです。 この訴訟はまだ係属中ですが、しかし実は、このような訴訟事件が起きていることは、私自身も今回、たまたま雑誌論文を読んで始めて知った事実なのです(雑誌「法と民主主義」448号、2010年5月、17頁)。それで、急いでパソコンの情報を検索して、確認することができました。何と、このような重要な事実が、一般の新聞にも、テレビにも全く報道されていないという不思議な事実が空恐ろしくなりました。 この雑誌にはまた、米軍基

    ジュゴン訴訟 | 中山研一の刑法学ブログ
    nisoku2
    nisoku2 2010/05/29
    >この訴訟は、沖縄の辺野古の周辺海域に生息している稀少価値のある魚「ジュゴン」がアメリカ海兵隊の基地の建設によって被害を受けるとし、そのことが米国の国家歴史保全法に違反しているとして、2003年9月に日米環
  • 公務員の政治活動 | 中山研一の刑法学ブログ

    国家公務員が休日に政党機関紙を配布したという同様の行為について、去る3月29日に東京高裁(中山隆夫裁判長)は、1審の有罪判決を破棄して「無罪」判決を言い渡したのですが(堀越事件)、今度は5月13日に同じ東京高裁(出田孝一裁判長)が、1審判決を維持して「有罪」判決を言い渡すという、全く逆の結論が出ました(宇治橋事件)。 3月の「堀越事件」判決については、表現の自由を重視したもので、「時代に沿う当然の判断だ」との評価が一般的でしたので(3月30日朝日社説)、5月の「宇治橋事件」判決は、意外の感をもって迎えられたのですが、それでもなお「理は無罪判決の方にある」との評価が注目されたのです(5月13日朝日社説)。 私自身も、前者の「堀越事件」判決の方を高く評価するのですが、ここでは、2つの判決が結論を分けた分岐点がどこにあったのかという点を冷静に検討しておく必要があると思います。両者とも、1974年

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    nisoku2 2010/05/23
  • 佐伯千仭博士の死刑廃止論(2) | 中山研一の刑法学ブログ

    6.死刑存置論は、応報刑論や一般予防(威嚇論)に基づいているが、そのような考え方からすれば、死刑は存続だけでなく公然と執行されることが要求されるはずであるが、今日では死刑の執行は公開されず、執行の事実さえ秘密にされるのは、応報や一般威嚇としての死刑制度の使命がすでに終わったことを示すものではないか。 7.裁判も人間のすることだから「誤判」を完全に無くすることはできず、日でもすでに4件の死刑再審・冤罪事件が発生している。もし死刑が執行されていたら、その後無罪となっても取り返しがつかないという点でも、死刑には刑罰としての適格性がないといわざるを得ない。 8.応報刑論は、因果応報が天地自然の道理で、犯罪を犯した者はそれに適しい刑罰を応報として受けねばならぬと主張する。しかし、有限であり、誤りをおかしやすい人間の営みである刑事裁判を天地自然の理法である応報にたとえるなどは思いあがりである。むしろ

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  • 佐伯千仭博士の死刑廃止論(1) | 中山研一の刑法学ブログ

    死刑については、わが国の世論にはまだ存続論が多いのが現状だといってよいでしょう。このブログでも、死刑廃止論に触れると根強い拒絶反応があることを感じます。しかし、世論も、死刑囚の再審・冤罪などの状況次第では、揺れ動く可能性があると思われます。 今回、改めて故佐伯博士の「死刑制度のゆくえ」と題する講演(法律時報69巻10号、1997年)を読み返しましたので、その体験的な主張を2回に分けて要約しておきます。 1.佐伯は、京大法学部の学生時代に、宮英脩教授の講義で「愛の刑法学」とそれにもとづく死刑否定の理論に心酔し、当時の思想運動に死刑をもって臨むのは無謀であるとする文章を新聞に投書したことがあり、それが死刑制度に対する違和感の始まりであった。 2.戦時中は、国防保安法や戦時刑事特別法など、死刑を科す法律が増え、戦後、死刑廃止論の代表者となった教育刑論者(木村亀二)でさえも、「死刑は、よみの国に

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  • 時効廃止・延長法案成立 | 中山研一の刑法学ブログ

    もっともっと議論されるべき「公訴時効」制度の改正問題が、あっという間に国会を通過し、改正案は4月27日に可決され、即日施行となってしまいました。政治と金や普天間基地の問題などで他の法案審議が進んでいない国会で、ほとんど実質的な論議もないままに重要な法案が通ってしまうという「異常」さには、驚きをこえて怒りを覚えます。 しかも、民主党の千葉景子法務大臣が記者会見で「犯罪被害者や国民の期待に答えるべくがんばった」と喜んだといわれるに至っては、開いた口が塞がらない思いがします。夏の参議院選挙を控えて、夫婦別姓や婚外子差別に対応する民法の改正案などについて国会審議の見通しが立たない中で、一つの「成果」を上げ、法務省内でも安堵の空気が広がったといわれているのです(2010年4月28日朝日夕刊)。 今回の改正の立案と審議過程と結論には、明らかに特定の犯罪被害者団体の強力な要請活動と、「犯人の逃げ得は許さ

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  • またまた「匿名」議事録 | 中山研一の刑法学ブログ

    平成16年(2004年)に新設された「危険運転致死傷罪」(刑法208条の2)の適用について、不当と思われる判決がでましたので、もう一度、立法時に立ち返って、改正案の「要綱(骨子)」が法務省内で準備され、法務大臣からこの要綱案に基づく法制審議会への諮問があり、刑事法特別部会での審議を経て、法制審議会から法務大臣に答申されるまでの一連の立法作業の流れをフォローする作業に着手しています。 結果的には、法務省が用意した「要綱(骨子)」が部分的な修正を経た上で、議会に上程されて成立したのですが、内容的には多くの問題点を含んだ法改正だったのです。そのことは、法制審の刑事法部会での審議内容にも現れており、そこでは新設の危険運転致死傷罪の性格や罪質、刑法上の傷害罪や傷害致死罪、業務上過失致死傷罪、さらには道路交通法上の罪との関係など、原則的で理論的な問題のみならず、実務上の罪の成立範囲とその限界など、実

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    nisoku2 2010/03/21
  • 合理的な疑いを越えて | 中山研一の刑法学ブログ

    これは beyond a reasonable doubt の訳ですが、戦後に継受した英米の刑事訴訟法の大原則として、日法にも導入され、合理的な疑いを越える証明がない限り、有罪とはできないこと、逆にいえば、合理的な疑いが残る限り、無罪とするということを意味します。「疑わしきは被告人の利益に」という原則も、同じ趣旨のものと解されています。 裁判員制度になった場合、裁判官は裁判員に対して「説明」することになっていますが、それは法律用語などのやさしい解説とともに、上述したような「無罪推定の原則」の内容と、それがなぜ必要なのかという理由を含めて、明確に説示することが求められているというべきでしょう。  この原則が必要な理由とは、それが被告人に有利な特権を与えるものではなく、もしこれらの原則がしっかりと考慮されなければ、実際には無実の人が有罪とされてしまう「冤罪」のおそれがあるからです。そして、現

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    nisoku2 2008/12/22
  • 警察の裏金作りの告発 | 中山研一の刑法学ブログ

    最近入手しました青年法律家協会弁護士学者合同部会の機関誌「青年法律家」(453号、2008年11月25日)の中に、興味のある記事が出ていましたので、紹介しておきます。 それは、「愛媛県警不当配転国賠事件」といわれるもので、現職警察官の巡査部長が、愛媛県警の裏金作りの実態を実名をあげて告発した直後に、拳銃取り上げや配置転換されたことは違法であるとして、愛媛県を相手に損害賠償を求めたという訴訟に関するものです。 北海道警、静岡県警、福岡県警などの捜査費不正支出が次々と明るみに出た2004年に、愛媛県でも、元警察職員による県警の裏金作りの実態の暴露に続いて、現職の巡査部長が実名で告発に踏み切ったところ、拳銃を取り上げられ、通信室に配置転換されたことは見せしめの報復措置であるとして訴えたところ、県の人事委員会が配転処分を取り消し、さらに国賠訴訟でも松山地裁で全面勝訴、控訴審の高松高裁でも配転処分の

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  • 責任無能力者の故意 | 中山研一の刑法学ブログ

    これは「刑法学ブログ」ですので、すこしむずかしい専門的なことも書いておきます。 心身喪失者等医療観察法は、心身喪失等の状態で、殺人、放火、強盗、強姦、強制わいせつ、傷害といった重大な他害行為(「対象行為」)を行った者に適用されることになっていますが、行為者が幻聴妄想等に基づいてこれらの行為を行ったときは、自分がやったといわれる行為については何も憶えていないとか、場合によっては、自分の身に降りかかる侵害を払いのけるためにやったと思い込んでいるような場合があり得ます。 これらの場合には、行為者には責任能力がないので刑罰は科されませんが、そのまま医療観察法上の「対象行為」があったと判断してのよいのかという問題が生じます。 従来は、行為者が現にこれらの重大な他害行為を実際におこなっているのだから、それだけで「対象行為」があったと判断して、医療観法による指定入院機関への入院や通院等の処分をすること

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    nisoku2 2008/07/27
  • 韓国の陪審制度 | 中山研一の刑法学ブログ

    わが国では、いま、国民の司法参加という名のもとに、いわゆる裁判員制度の導入が来年5月から施行と決まっており、表面上は着々と準備が進んでいるように見えますが、しかし実際には、国民の間の市民参加への関心は予想外に低く、法曹専門家の間にも異論があり、延期論まで出ているという状況にあります。それが、絶望的といわれるわが国の刑事司法の改革につながるのかという点からしますと、市民参加によっても、代用監獄における密室での長時間の取調べ、長い勾留期間、極端に低い無罪率、死刑判決の増加といった現状にメスが入るという保障がないところに悲観論に傾く根拠があると思われます。 これに対して、お隣りの韓国でも、陪審法(刑事裁判参与法)が2007年6月に制定され、すでに施行されていますが、その内容には、きわめて注目すべき点があります。そこでは、アメリカ風の陪審制度が導入されたのですが、何人も国民参与裁判を受ける権利があ

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    nisoku2 2008/05/22
  • 9条違憲判決 | 中山研一の刑法学ブログ

    名古屋高裁は2008年4月17日、航空自衛隊のイラクでの派遣活動について、憲法9条に違反するとの判断を下しました。判決が主文では国側の勝訴としつつ、理由の中で違憲判断を示すという手法をとったために、国側は上訴できずに違憲判決が確定することになりました。国側は、違憲判断が傍論で蛇足だといい、「関係ねえ」などどいって無視しようとしていますが、法治国家における司法への信頼を自ら放棄するものといわざるを得ません。 この点で、想起されるのは、1973年(昭和48年)9月7日に、札幌地裁の福島裁判官が下した長沼ナイキ基地訴訟に関する自衛隊違憲判決ですが、5月1日の朝日新聞に、この福島重雄氏が「司法は堂々と憲法判断を」という文章を寄稿されています。国民が関心をもたなければ、裁判官も消極的な「統治行為論」に逃げ込みやすくなってしまうといわれるのです。 かつての長沼判決には、以下のような格調高い判旨が含まれ

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    nisoku2 2008/05/02
    へー。>因みに、福島氏は私と同期の瀧川ゼミ生の一人でした。
  • 戸別訪問違憲判決 | 中山研一の刑法学ブログ

    暮れも押し詰まった日、ある元裁判官のA氏から手紙が送られてきました。この方は、昭和43年(1968年)当時、公職選挙法上の戸別訪問罪に関する事件で無罪判決を書いた勇気のある裁判官で、1984年5月発行の雑誌「篝火」(かがり火)に寄稿された「思い出の裁判」と題する文章のコピーが封入されていました。この雑誌は、青法協裁判官部会の機関誌として、歴史的にも貴重なものです。 私自身も、選挙犯罪の中で「戸別訪問罪」に注目し、このA裁判官の書かれた格調高い無罪判決にも著書の中で触れていましたので、一挙に親近感が湧いてきました。 この寄稿文の中には、戸別訪問の禁止を合憲とする最高裁判所の判決(昭和42年)が出た直後に、和歌山の田舎の妙寺簡裁の若い裁判官が、あえて正面から違憲判決を書くに至った経緯が、揺れる心理と苦悩とともに詳細に描かれています。 無罪判決後の後日談にも興味がありますが、和歌山の所長から「名

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    nisoku2 2007/12/31
  • 条例違反の盗撮行為 | 中山研一の刑法学ブログ

    最近、熊の弁護士から、熊県の迷惑行為防止条例違反の事件について、相談を受けました。これは、いわゆるプリクラ機を利用中の女子学生の背後から、カメラつき携帯電話をスカートの下方に差し出して、そのスカート内を撮影しようとした行為が、公共の場所において人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で「卑わいな言動」をしたものとして起訴されている事件です。 それは、盗撮行為として、文句なしに有罪になりそうに思えるのですが、厳密には、撮影したのではなく、撮影しようとした(被害者は知らずに現場を去り、カメラには何も写っていなかった)という点に問題があります。検察官も、直接「盗撮行為」の規定ではなく、その他の「卑わいな言動」に当たると解しました。これはいわば盗撮行為の未遂に当たる行為ですが、未遂を処罰する規定がありませんので、一般的な「卑わいな言動」の中に含めて処罰することができるかという

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  • 共謀罪のこと | 中山研一の刑法学ブログ

    いわゆる「共謀罪」の立法化は、修正案が出て、まだ予断を許さない状況ですが、近着の刑法雑誌(46巻2号)に、政府委員の経験も長い元大阪高検検事長の東条伸一郎氏(明治学院大学教授)の注目すべき発言が紹介されていますので、少し長いのですが、引用しておきます。 「実務家の感覚としては、今回の経緯から見て、いずれば『共謀罪』という形で入ってくるのは間違いないと思われるが、音では、賛成していない。法執行機関が相手にしているものは、ほとんどの場合、結果(あるいは未遂)が発生している犯罪である。捜査は、これらの結果が出た犯罪については、行為者から始まって、その背景には何があるのかということで進んで行き、共謀共同正犯にまでたどり着く。ところが、今後の共謀罪というのは、後ろの結果の部分がない。いきなり共謀のみが問題となる。結果から遡って捜査を進めてきた現場の捜査官とすれば、共謀というのは非常にやりにくい。

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  • 心神喪失者等医療観察法の1年 | 中山研一の刑法学ブログ

    今年1月のブログに「心神喪失者等医療観察法の6ヶ月」という記事を書きましたので、その後の6ヶ月を加えて、1年後の状況をフォローしておきます。 法の成立(2005年7月15日)によって、精神障害により心神喪失または心神耗弱の状態で重大な他害行為を行ったが、不起訴、無罪、執行猶予になった対象者に対して、裁判所の関与のもとで、医療および観察をする新しい制度が創設されましたが、1年の経過の中から、いろいろな問題が出てきていますので、そのいくつかをあげておきます。 まず、法による申立件数は、全国で計355件(終局件数293件)で、そのうち裁判所による入院決定が160件(56.6%)、通院決定が73件(24.9%)、不処遇決定(治療の必要なし)が49件(16.9%)、却下決定(対象行為なし、責任能力あり)が10件(3.4%)となっています。ここからは、入院決定に対して通院決定や不処遇決定がかなり多

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  • ヘーゲルの刑法思想 | 中山研一の刑法学ブログ

    ヘーゲル(1770-1831)は、カントと並び称されるドイツ観念論哲学の巨匠ですが、哲学の領域を越えて、刑法思想においても、カント・ヘーゲルの絶対的応報刑論(犯罪の報いとしての刑罰)の主張者であると理解されてきました。ヘーゲルによれば、犯罪は法の否定であり、刑罰は法の否定の否定であり、犯人が責任に相当する刑罰の害悪を受けることによって、犯罪は弁証法的に止揚され、侵害された法が回復されるというのです。 ところが、11月4日の刑法読書会では、最近のドイツの文献の紹介として、ヘーゲルを再評価する有力な動きがあり、そこでは、ヘーゲルの帰属論(行為を責任に帰する)の中に、古典的な帰属論を超えて、むしろ帰属を制限しまたは阻却する(帳消しにする)方向の主張があることが注目されているという報告がありました。ヘーゲルによれば、安定した社会では、刑罰を緩和するだけでなく、帰属そのものも断念されるというのです。

    ヘーゲルの刑法思想 | 中山研一の刑法学ブログ
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    nisoku2 2006/11/05