住友林業と東京都は今春、伊豆大島(東京都大島町)に自生する樹齢800年の桜の後継となる苗木を現地に植えた。この苗木は、住友林業が老木となった桜を組織培養によって複製した“クローン”。ほかにも各地からご神木や名木と呼ばれる桜や梅の保護を相談され、苗木を提供している。30年前から組織培養によって貴重な樹木を守ってきた住友林業筑波研究所(茨城県つくば市)を訪ねた。 試験管の中に緑の固まりが見える。水草のようだが、桜から切り取った組織だ。培養液に浸し、芽が出ると培地を敷いたフラスコに移す。空気中に出してあげると成長を始める。 フラスコ内は温度と湿度を厳しく管理する。触れる時は異物の混入を防いだ室内で、殺菌した器具を使う。根が出るまで無菌状態で大切に育て、時期が来たら鉢植えに移して苗木に成長させて依頼者に戻す。 育成中の苗木が並んだ施設の屋外には、葉を茂らせた桜の木がある。初めて桜の組織培養に成功し