そこまでしなくても…再起に協力したくなるお詫びは少ない (田中 秀征=福山大学教授) 数年前に都内でタクシーに乗ったときのこと。年配の運転手で風格はあるが、どこかぎこちない。東北弁はいいとしても、「日本橋」も分からないほど道を知らないのには困った。 ふしぎに思って根掘り葉掘り聞き出すと驚いた。 農地・不動産を売り、社員の退職金を工面したタクシー運転手 彼は東北のある県で十数人の零細な工場を経営していたが、バブル崩壊後の不況で倒産の憂き目にあった。 「社員に申し訳ない」と責任を感じたその社長は、農地など自己所有の不動産を売却。退職金代わりに社員に配ったという。そして、無一文になった彼は、家族を養うために一人上京して運転手になった。 私は思わず、「そこまでしなくてもいいのに」と言ったが、彼は即座に「それでも足りないくらい社員に迷惑をかけた」と言って譲らない。 私が「それで社員た