五十嵐:1960年代以降の近代批判、ポストモダン理論は基本的に読解論です。対象をどう読むか。建築に限らず都市論でもケビン・リンチやジェイコブスなども、つくる理論というよりはどう読むかの理論です。アレグザンダーの『都市はツリーでない』も、読解のロジックとしては面白いのですが、いざ彼が建築をつくった場合、パターン・ランゲージにシフトして、それが直接生かされているという感じはしない。 鈴木:都市をどう読むかというときに建築書を挙げたからかもしれないけれども、都市をつくる者として読んでみせながら、自分がつくらないことによって客観化してみせるような読みはダメでしょう。ベンヤミンの『パサージュ論』とか、建築をつくらない人たちが都市に触れた本に負けているし、本当の意味での都市のリアリティには至っていないという気がします。(pp.14-15) 「20世紀を決めた/決めそこねた書物」『建築雑誌』Vol.11