2008年12月15日11:00 カテゴリ本 集中講義!アメリカ現代思想―リベラリズムの冒険 ランドの本が過ぎ去ったリバタリアンの時代の教典だとすれば、これから来る(かもしれない)リベラルの時代の教典は、ロールズの『正義論』だろう(邦訳はおすすめできない)。とはいえ、この難解な大著を読むのは骨が折れる。本書はロールズを中心にして、一方ではリベラル対リバタリアン、他方ではリベラル対コミュニタリアンの間で起こった論争を概観したものだ。これだけ読んでも内容はわからないが、読書案内としては便利だ。 ロールズの本を批判したのは、ノージクの『アナーキー・国家・ユートピア』である。これは夜警国家的な「最小国家」以上の政府の介入はすべて自由の侵害であり、公平な分配なるものは存在しないとロールズを批判したもので、リバタリアンの必読書である。経済学者の多数派もノージクと同じ意見で、公共財の供給など「市場の失敗