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ブックマーク / book.asahi.com (6)

  • 「プロメテウスの罠」書評 腹立たしい官公庁の愚民観|好書好日

    プロメテウスの罠 9 この国に当に原発は必要なのか!? 著者:朝日新聞特別報道部 出版社:学研パブリッシング ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション プロメテウスの罠―明かされなかった福島原発事故の真実 [著]朝日新聞特別報道部 3・11を検証する「プロメテウスの罠(わな)」は紙連載中であるが、第6部までがとなった。福島県浪江町で放射能汚染に遭遇した避難民たち、研究者たちの奮闘、官邸の混乱、チェルノブイリで起きたことなどが収録されている。 未曽有の地震と津波だった。現場の混乱と混迷も当然であるが、検証記事を読むとあらためて、なぜに、という思いが深まる。現地の放射能汚染のデータは随分と収集されつつ、現地住民への伝達はまったく遅れた。正確な情報をもっとも必要とし、いち早く伝えられるべき住民はないがしろにされていた。 官公庁は事実を伝えることになぜこんなにも臆病なのか。「パニックを恐れ

    「プロメテウスの罠」書評 腹立たしい官公庁の愚民観|好書好日
  • 「世界を騙しつづける科学者たち」書評 「懐疑の売人」はなぜ消えない|好書好日

    世界を騙しつづける科学者たち〈上・下〉 [著]ナオミ・オレスケス、エリック・M・コンウェイ 殺虫剤DDTは当初、奇跡の化学物質に見えた。即効性があって、効果も長持ちする。なのにヒトには害がない。しかし、効き目があるからこそ、生態系の平衡を崩していた。分解されにくいDDTは昆虫の細胞内に残留し、次の捕者に移行して、生殖組織まで害するのだ。物連鎖による生物濃縮。それは最後には鳥がさえずることのない季節をもたらす。 1960年代初め、『沈黙の春』を刊行し、環境問題に大きな警鐘を鳴らしたレイチェル・カーソン。その彼女が今、ネット上で徹底的に非難されているのをご存じだろうか。彼女は間違っており、ナチス、スターリンよりも多くの人を殺したと。 主張はこうだ。カーソンの警告によってDDTが40年前に禁止されたせいでその後何百万人ものアフリカ人がマラリアで死んだというのだ。ひるがえって、DDTで直接、死

    「世界を騙しつづける科学者たち」書評 「懐疑の売人」はなぜ消えない|好書好日
  • 「ラーメンと愛国」書評 なぜ作務衣を着るのか|好書好日

    ラーメンと愛国 [著]速水健朗 確かに謎だったのだ。なぜ最近のラーメン屋店主は、藍染めのTシャツや作務衣(さむえ)を着てタオルを頭に巻くのか。なぜ相田みつを系の人生訓やら「ラーメンポエム」を壁に張り出すのか。 こうした疑問にピンと来た方は手に取るべし。巻措(お)くあたわざる知的興奮で満腹になることうけあいである。 もともとは中国発祥のラーメンが、なにゆえ国民とまで呼ばれうる存在となったのか。著者はその背景に敗戦後に展開されたアメリカの小麦戦略と大量生産、大量消費の時代をみる。登場人物はチキンラーメンの発明者・安藤百福(ももふく)から列島改造の田中角栄まで多士済々。一杯のラーメンには戦後日の消費文化史が凝縮されているのだ。 作務衣に象徴される「捏造(ねつぞう)された伝統」という物語に依拠するナショナリズム、それがラーメン道だ。著者の得意とするヤンキー文化への接続がなされないのは心残りだが

    「ラーメンと愛国」書評 なぜ作務衣を着るのか|好書好日
  • アマルティア・セン「アイデンティティと暴力」書評 「単一帰属」の幻想を打ち砕く|好書好日

    アイデンティティと暴力―運命は幻想である [著]アマルティア・セン グローバル経済の格差と貧困を温床とするテロと暴力の連鎖。この、それこそグローバルなテーマにどう向き合ったらいいのか。 書は、ノーベル経済学賞受賞のセンによる渾身(こんしん)の処方箋(しょほうせん)である。そのキーワードは、アイデンティティーだが、書が心打つのは、センが自らのアイデンティティーをめぐる「生体解剖」的な分析を通じて、アイデンティティーの複数性と「選択」の必要を説いていることにある。 この揺るぎない信念から、センは、暴力への誘因となる「単一帰属」のアイデンティティーの幻想を打ち砕こうとする。その一つが、狭隘(きょうあい)な利己的功利主義に基づく「合理的愚か者」の幻想だ。これは、一切の個別的なアイデンティティーを消し去り、人間をただ欲望機械のような利己心だけで動く「普遍的な」アイデンティティーに還元しようとする

    アマルティア・セン「アイデンティティと暴力」書評 「単一帰属」の幻想を打ち砕く|好書好日
    quatroshe
    quatroshe 2011/10/04
    サンデルを盛んに喧伝した奴らが多かったのは、あれがアメリカの「共同体屋」だったから。だから共同体偏執者の類どもに受けた。
  • コラム別に読む : 「原子力ムラ」 を超えて [著]飯田哲也、佐藤栄佐久、河野太郎 - 永江朗 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    ■原発より危ない、動かしている連中 猛暑が続く。今年の夏は電力不足で大パニックになるだろうとか、熱中症で死人がたくさん出るだろうといわれたけれども、とりあえず稿執筆時点(8月15日)では、大きな問題はない。原発を止めると産業が止まる、日経済はダメになるぞ、といった脅迫も眉につばして聞くようにしたい。 原発なんて、なければないで済むもの。そして、誰も近くに住みたいとは思わないもの。それなのに人口減少と財政難に苦しむ地方を、札束で頬を張るようにして受け容れさせてきた。その挙げ句の果ての3・11なのに、九州電力&佐賀県知事による「やらせ」事件のようなことが起きる。原発利権って、よほどオイシイものなのだろう。 飯田哲也・佐藤栄佐久・河野太郎の『「原子力ムラ」を超えて』は、日の原子力政策・原子力行政が、いかに歪んだ構造にあるのかを明かす。副題は「ポスト福島のエネルギー政策」。 飯田哲也は大学と

    コラム別に読む : 「原子力ムラ」 を超えて [著]飯田哲也、佐藤栄佐久、河野太郎 - 永江朗 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
  • 【レビュー・書評】困ってるひと [著]大野更紗 - 書評 - BOOK:asahi.com(朝日新聞社)

    困ってるひと [著]大野更紗[評者]中島岳志(北海道大学准教授・南アジア地域研究、政治思想史)[掲載]2011年7月10日著者:大野 更紗  出版社:ポプラ社 価格:¥ 1,470 ■制度の谷間の難病、挫けそうでも笑う ミャンマーの難民問題を研究する24歳の女性が、突然、難病にかかった。病名は「筋膜炎脂肪織炎症候群」。免疫システムが正常に制御されず、全身に炎症がおこる。何十種類もの薬を服用しつつ、熱、倦怠(けんたい)感、痛みに苦しむ毎日が続く。 書は、発病からの苦闘を描いたユーモアたっぷりの闘病ノンフィクションだ。ネット連載時から話題になり、ツイッター上では絶賛の声があふれた。 最初は、どこの病院に行っても、何の病気なのかが分からない。原因も不明。いくつかの病院を転々とし、自力でたどり着いた大学病院でようやく入院。格的な治療がスタートする。 そこで著者の前に立ちはだかったのが、日の複

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