首都圏の私立中学の受験がほぼ終わった。受験生はもちろん、疲れ果てた親の姿がそこにはある。コラムニストのオバタカズユキ氏が考える。 * * * 私が育った千葉県の新興住宅地には、歴史や文化を感じさせるものがなく、東京で働くサラリーマンが寝るための家と、がんじがらめの管理教育の学校と、そこに通う子供の面倒をみる専業主婦がいるだけだった。 もちろん、商店の家も働く母も、反発して暴走族になる子供も混じってはいたが、大多数は金太郎飴のような「千葉都民」だった。零細卸問屋の息子である私は、千葉都民の千葉都民による千葉都民ための町に馴染めず、早く他の土地に出たくて仕方がなかった。 そして、東京の同じ町に住んで30年以上になる。千葉のあの町に比べれば、圧倒的に居心地がいい。歴史や文化に満ちており、さまざまな知的職業人が行き交っている。中卒や高卒の職人もけっこういるが、彼らには己の腕一本で食っているプライド
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