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ブックマーク / blog.goo.ne.jp/jchz (20)

  • ゆるくて、かわいい決定版/日本の素朴絵(三井記念美術館) - 見もの・読みもの日記

    〇三井記念美術館 特別展『日の素朴絵-ゆるい、かわいい、たのしい美術-』(2019年7月6日~9月1日) この夏、一番楽しみにしていた展覧会が始まった。展では、これまで格的に取り上げられることのなかった、様々な時代・形式の日の素朴絵を紹介し、名人の技巧や由緒ある伝来に唸るだけではない、新しい美術の楽しみ方を提供する。監修は、長年このテーマを追いかけている矢島新氏。「へそまがり」の金子信久氏と並んで、今年は「新しい美術の楽しみ方」がムーブメントになるといいなと思う。 展示の冒頭は「立体に見る素朴」で、いきなり期待の斜め上からの衝撃をくらう。『埴輪(猪を抱える漁師)』は、逆さに抱えられた小さな猪に笑った。『墨書人面土器』は、京都市考古資料館で見た覚えがあったが、これを「素朴絵」と捉えるセンスに感心した。丸顔で眉の太い『獅子・狛犬』(和歌山・河根丹生神社)はがきデカっぽく、目と口の大きい

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    stkysm 2019/07/15
  • 恐ろしくて、少し滑稽/空気の検閲(辻田真佐憲) - 見もの・読みもの日記

    〇辻田真佐憲『空気の検閲:大日帝国の表現規制』(光文社新書) 光文社 2018.3 1928年から1945年までの間、帝国日で行われた検閲の実態を紹介する。これ以前については、1923年の関東大震災で内務省の庁舎が火災に遭い、多くの資料が灰燼に帰してしまったため、分からないことが多いのだそうだ。この時期以降は、左翼運動の取り締まりのため、検閲機構が拡充され、資料も豊富に残り、比較的自由だったエロ・グロ・ナンセンスの時代から、日中戦争・太平洋戦争を背景に安寧秩序紊乱の禁止へという、大きな変化を確認することができる。 はじめに活写されるのは、昭和初期(1928-1931年)、エロ・グロ・ナンセンスと呼ばれる享楽的な出版物と検閲官の戦いである。「検閲は怖いもの、民主主義の敵」を身構えて書を読み始めると、この第1章で腰砕けになる。性器、性欲、性行為などの露骨な描写、サディズム、マゾヒズム、獣

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    stkysm 2018/03/23
  • 博物学者として官僚として/田中芳男(国立科学博物館) - 見もの・読みもの日記

    ○国立科学博物館 企画展『没後100年記念 田中芳男-日の博物館を築いた男-』(2016年8月30日~9月25日) 企画展といっても常設展エリアの展示である。確か始まっているはずだと思って行ったのだが、館内に入ってしまったら何も案内がなくて、どこでやっているのかよく分からない。慌ててスマホを取り出して「日館地下1階、多目的室」であることを確認し、ようやく会場を見つける。 田中芳男(1838-1916)は、幕末から明治期に活躍した博物学者・植物学者。蘭方医伊藤圭介に学び、新政府の官僚として、パリやウィーンで開催された万国博覧会に参加し、内国勧業博覧会の開催を推進し、数々の著作を残し、農林水産業のさまざまな団体、東京上野の博物館や動物園の設立にも貢献した。国立科学博物館の「設立者ともいえる人物」であるところから、没後百年を記念して、田中の幅広い事蹟を紹介すると「あいさつ」にうたわれている。

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  • 聖戦イメージのつくりかた/戦争と広告(森正人) - 見もの・読みもの日記

    ○森正人『戦争と広告:第二次大戦、日戦争広告を読み解く』(角川選書) KADOKAWA 2016.2.25 日中戦争と太平洋戦争の広告を題材に、戦争においてメディアが果たす機能を考える。ここで「広告」とは、人々にあるメッセージを知らせるメディアの意味で、書は、博覧会や博物館における事物展示と報道雑誌における写真を主に取り上げる。これらは、絵画と異なり「物らしさ」を強く感じさせる点が共通している。 書には、戦時中の『アサヒグラフ』『写真週報』の誌面が多数掲載されている。中には、笑ってしまうような稚拙な合成写真もないではないが、写真作品として、かなりいいと感じたものもあった。たとえば、広大な雪山を背景に銃を構える北辺警備の兵士を鉄条網越しに捉えた写真。静謐な光景がはらむ緊張感が伝わってくる(書139頁)。あるいは出撃のため、各自の戦闘機に向けて走り出す特攻隊員たちを背後から捉えた写

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    stkysm 2016/04/15
  • 平安京地図(京都市)と画像コレクション(NYPL) - 見もの・読みもの日記

    これはいい!と思ったWebサイトの話題を二つ、久しぶりに。 ■平安京オーバレイマップ(京都市平安京創生館) 京都市平安京創生館で公開されている「平安京跡イメージマップ」を、現在の地図上に配置したもの。立命館大学アートリサーチセンターのサーバで公開されている。特定の時代と現在を重ね合わせた地図は、これまで紙媒体の出版物にはあったし、Web上で公開されている画像もいくつかあった。しかし、これほど精緻で、縮小拡大が自在なものはなかったように思う。私は京都の町を歩くとき、だいたい平安時代の地図を思い描いているので、自分の頭の中が可視化されたような気がする。 今週末は関西行きの予定だが、大阪泊と名古屋泊なので、京都に長居はできない。ぜひ気候のいいときに、この地図を持って京都の町を歩きたい。そろそろ思い切って、タブレット買わなきゃ。 ※京都新聞「平安宮の中心施設、謎深まる。調査3回、建物跡未発見」(2

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    stkysm 2016/01/17
  • 丸善ジュンク堂「民主主義ブックフェア」問題備忘録 - 見もの・読みもの日記

    ○MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店におけるフェア再開について(2015年11月13日) 事の起こりを整理しておくと、丸善ジュンク堂書店渋谷店が9月20日頃からブックフェア「自由と民主主義のための必読書50」を開始し、10月19日から書店員がツイッターで「夏の参院選まで闘います!」などと発信した。これに対し、選書が偏っていると批判を受けたことと、書店員が(規則に反して)非公式のツイッターアカウントを開設していたことを問題視し、同店は10月21日にブックフェアの棚を「自主的に」撤去。内容を見直し、11月13日から「今、民主主義について考える49冊」に変更して再開した。 ※朝日新聞:ジュンク堂民主主義フェアを見直し 店員ツイートに批判(2015/10/23) ※The Huffington Post:丸善ジュンク堂、民主主義フェアを再開 外されたは...【前回との比較一覧】(2015/1

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    stkysm 2015/11/16
  • 一遍と歩く(東京国立博物館)+常設展 - 見もの・読みもの日記

    ○東京国立博物館・館 特別1室・特別2室 『一遍と歩く 一遍聖絵にみる聖地と信仰』(2015年11月3日~12月13日) 特別展と一緒に見てきた常設展。この秋、横浜方面で国宝『一遍聖絵』(一遍上人絵伝)の展示があることは聞いていたが、東博でも関連展示が行われているとは知らなかった。東博の展示リストには『一遍聖絵 巻第七』(国宝)があがっている。え?東博が『一遍聖絵』を持ってるんだっけ?と思った私の疑問は、「1089ブログ」で担当研究員さんの解説を読んで氷解した。そもそも国宝『一遍聖絵』全12巻は神奈川県の遊行寺(清浄光寺)が所蔵する。しかし巻七だけは、遊行寺と東博に2巻伝わっているのである。上記のブログによれば「もとは1巻だったのですが、これがいつしか分断され(絵巻にはよくあることです)、模写で補われつつ、2巻に仕立てられました」とのこと。だから、どちらも「物」である。 『一遍聖絵』は

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    stkysm 2015/11/14
  • 科学技術政策の100年/私の1960年代(山本義隆) - 見もの・読みもの日記

    昨年2014年10月に行われた講演を下敷きにしたもの。講演のあと、雑誌『週刊金曜日』から活字にしないかと誘われて、加筆して書となった。以上の経緯は「2015年8月 2015年安保闘争の渦中で」と付記された「はじめに」に書かれている。 著者は1941年生まれ。1960年に東京大学に入学し、安保闘争を経験した。1962年、物理学科に進学し、大学管理法(大管法)闘争に遭遇する。大学院に進み、素粒子論の研究をしながら、ベトナム反戦運動にかかわる。1968年1月、医学部の研修医制度をめぐって東大闘争が始まり、6月、安田講堂が占拠される。講堂の雑用係をしていた著者は、10月、「東大全共闘代表」に選出される。69年1月、機動隊によって安田講堂バリケードは解除され、9月に著者は逮捕される。70年10月に保釈され、71年3月に再逮捕。再保釈後は大学に戻らず、零細なソフトウェア会社を経て、予備校の仕事をしな

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    stkysm 2015/11/14
  • 笑顔でお別れ/雑誌・芸術新潮「超芸術家 赤瀬川原平の全宇宙」 - 見もの・読みもの日記

    ○雑誌『芸術新潮』2015年2月号「追悼大特集・超芸術家 赤瀬川原平の全宇宙」 新潮社 2015.2 2014年10月26日に亡くなられた赤瀬川原平さん(1937-2014)の大特集である。でも追悼「大特集」って言うのかね。表紙は赤瀬川さんの「赤」一色。黒地に水玉みたいなポップはシャツを着た赤瀬川さんが笑っている。そうそう、この笑顔。なぜかマスコミに載るときの赤瀬川さんの写真は、気持ちよく上下の歯を見せて笑っていることが多かった。 書は77年の「超芸術家」人生をゆっくりたどっていく。私は、尾辻克彦名義で発表した小説「肌ざわり」(1980刊)や「父が消えた」(1981刊)を読んだのが、たぶん赤瀬川さんとの最初の接触である。60年代の前衛芸術家時代、70年代のパロディ・ジャーナリズム時代はよく知らない。最近になって「ネオ・ダダ」とか「櫻画報」を知って、すごい活動をしていたんだなあと呆れている

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    stkysm 2015/02/19
  • 未来の「本」と「読者」のために/「本が売れない」というけれど(永江朗) - 見もの・読みもの日記

    ○永江朗『「が売れない」というけれど』(ポプラ新書) ポプラ社 2014.11 と書店の今とこれからを考える1冊。まず、マクラに語られるのは、「街の屋」がどんどん消えているという現実。著者は講演で訪れた土佐市で、中学生が歩いて行ける距離に屋がないことを知る。その分、市立図書館はよく利用されているという。ううむ、これって、いいことなのか嘆かわしいことなのか悩む。 今や全国的に見て、日人にとっての最大の読書インフラは、新刊書店でなく図書館である。その背景には、図書館の(よい意味での)変化や、手っ取り早い倹約の実践もあるけれど、を「所有するもの」から「体験/消費するもの」と考える意識の変化も大きいのではないかと分析されている。 また、街の零細書店が消えていく原因のひとつに大型書店の出店があげられる。しかし著者は、多くの読者(消費者)が大型書店の出店を歓迎している事実を冷静に受け止めて

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    stkysm 2014/12/01
  • そうだ、京博へ行こう/京都で日本美術をみる(橋本麻里)ほか - 見もの・読みもの日記

    この秋、注目の京都国立博物館に関する雑誌・書籍をまとめて紹介。 ■雑誌『日経おとなのOFF』2014年10月号「ずらり国宝 絶対見逃せないBEST25」 日経BP社 2014.9 「秋の6大国宝展覧会完璧ガイド」と名打って、京博の「京へのいざない」、根津美術館の「名画を切り、名器を継ぐ」、三井記念美術館の「東山御物の美」、京博の「国宝 鳥獣戯画と高山寺」、サントリーの「高野山の名宝」、東博の「日国宝展」(開始順)で展示される約200件の国宝から、美術関係者の投票によって「絶対見逃せない国宝ランキングBEST25」を紹介する。第1位は『鳥獣人物戯画』。さまざまな分野の関係者の声を総合しているので、ランキング自体は、あまり面白くない。ただ、それぞれの作品に対するコメントは、曲者ぞろいで面白い。 山下裕二先生が語る「これも国宝にするべきでしょう!」は、いちいちうなずきながら読んだ。応挙の国宝指

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    stkysm 2014/11/16
  • 大学総長の責務/言論弾圧(将基面貴巳) - 見もの・読みもの日記

    ○将基面貴巳『言論弾圧:矢内原事件の構図』(中公新書) 中央公論新社 2014.9 内容とは無関係だが、将基面貴巳(しょうぎめん・たかし)さんって、ずいぶん難しい名前だなあ、と思った。あとから知ったことだが、主に海外の大学でキャリアを積んでいらして、『ヨーロッパ政治思想の誕生』で2013年のサントリー学芸賞を受賞されている。 「矢内原事件」とは、東大経済学部教授であった矢内原忠雄が、政府に批判的な論説を発表したことによって職を辞した事件である。私が初めてこの事件の梗概を学んだのは、立花隆の『天皇と東大』だった。同書の内容は詳しく覚えていないが、軍国主義に抵抗し、思想・学問の自由を貫いた矢内原に肩入れする立場から書かれていたと思う。それから竹内洋さんの『大学という病』も読んだ。こちらは、昭和初期の東大経済学部における教授たちの権力闘争を描いたもので、「矢内原事件」はその一挿話のような扱いだっ

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    stkysm 2014/10/27
  • 2014年9月@西日本大旅行:四国へんろ展・高知編(高知県立美術館) - 見もの・読みもの日記

    ○高知県立美術館 『空海の足音 四国へんろ展』《高知編》(2014年8月23日~9月23日) 九州への出張が決まり、ついでに宿願の白峯寺に参拝できないかと思って調べているうち、この情報を見つけた。四国霊場開創1200年記念四県連携事業『空海の足音 四国へんろ展』。四国4県の4つの美術館・博物館が「四国へんろ」という共通テーマのもとに、各県の特色をいかした展覧会を開催するというもの。巡回展ではないので、全貌を知るには、4県すべてを「お遍路」しなければならない。会場と日程は以下のとおり。 ・高知編 高知県立美術館(2014年8月23日~9月23日) ・愛媛編 愛媛県美術館(2014年9月6日~10月13日) ・香川編 香川県立ミュージアム(2014年10月18日~11月24日) ・徳島編 徳島県立博物館(2014年10月25日~11月30日) とりあえず始まっている高知と愛媛に行ってみようと思

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    stkysm 2014/09/28
  • 2014年3月@東京:探幽3兄弟(板橋区立美術館) - 見もの・読みもの日記

    ○板橋区立美術館『探幽3兄弟~狩野探幽・尚信・安信~』(2014年2月22日~3月30日) 江戸狩野の祖、狩野探幽(1602-74)と、その弟の尚信(1607-50)、安信(1613-85)を取り上げる。昨年12月に見た出光美術館『江戸の狩野派-優美への革新』と重なる主題である。会場に入ると、三人それぞれの位牌(池上門寺より出陳)が目に入ってびっくりした。手を合わせてお参りした上で、作品を見始める。 探幽の作品で好きなのは『富士山図屏風』。心が洗われるような晴れやかさ。実は、富士山の描かれていない右隻のほうが一層好き。南禅寺の『群虎図襖』は、金地を背景に竹林と二匹のトラが描かれているが、つやつやした尻尾の毛並に加え、筋肉のつきかたもリアル。 ええと、出光の展覧会では、尚信と安信、どっちの評価が高かったんだっけな?と記憶を探っても思い出せなかったが(答えは尚信)、私の好みは尚信である。素人

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  • 個性豊かな神々/大神社展(東京国立博物館)前期を中心に - 見もの・読みもの日記

    ○東京国立博物館 特別展『国宝 大神社展』(2013年4月9日~6月2日) 連休前の4月20日(土)にまず前期を、友人と見に行った。それからブログを書く時間が取れないまま、きのう5月11日(土)後期も見てきたので、まとめてレポートする。 前期の参観日は冷たい雨の降る日で、東博の特別展としては、比較的空いていた。仏像好きの友人なので「まず第二会場の神像から回りましょうか」とも話したが、結局、順路に従うことにする。そのほうが気持ちが盛り上がっていいみたい。 第1章は、みやびやかな「古神宝」から始まる。前期は春日大社と熊野速玉大社が中心。そこに第2章「祀りのはじまり」が入り組んでいて、沖縄や沖ノ島の考古文物(銅鏡、子持ち勾玉など)が混じり、『古事記』『日書紀』などの文献資料に進む。『延喜式』の神名帳の前で「このアマテラスから化生した三女神が宗像神社の神でさ」と話している男子がいて、詳しいな、若

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  • ロマンとアイドル/近代日本の歴史画(講談社野間記念館) - 見もの・読みもの日記

    ○講談社野間記念館 『近代日歴史画』展(2013年3月9日~5月19日) 明治中期、急速な欧化の反動として、日の伝統や歴史を見直す機運が高まった時期に、日の神話や歴史を題材にした「歴史画ブーム」があった。展の開催趣旨によれば、「講談社が刊行する各雑誌の口絵などの部分でも、歴史画は、広く親しまれる画題となって」いったという。なるほど。会場には、あっと驚くような大作はなく、親しみやすい小品が多かった。 1室目は縦長の軸物が多かった。敢えて作品名を見ず、誰を描いたものかが分かるかどうか、試してみる。弓の上端にトビを据えた『神武天皇』や、燈籠大臣『平重盛』は小道具(?)で分かる。『歌僧西行』が分かるのは、深く「西行」のイメージが刷り込まれているからなんだろうな。よく見ると端座する足元が旅姿(脚絆)である。逆に『人麿』は、中世以降の歌詠みイメージと異なり、武人っぽくて、分からなかった。枝折

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  • 浅草文庫の記憶/資料館における情報の歴史(東博・本館16室) - 見もの・読みもの日記

    ○東京国立博物館・館16室(歴史資料) 東京国立博物館140周年特集陳列『資料館における情報の歴史』(2013年1月8日~3月3日) 展示趣旨に「資料館は、明治5年の東京国立博物館の開館時に、英国の大英図書館をモデルに設置された日最初の官立図書館である『書籍館』に由来しています」と、いきなり言われても、一般利用者には何のことか、分からないだろう。私も分からなかった。 東博のTOPページで、それらしいメニューを捜して「調査・研究」にカーソルをあわせると、「資料館利用案内」というリンクが現れた。「東京国立博物館資料館は、1872年(明治5年)の博物館の創設以来、博物館が収集・保管してきた写真・図書などの学術資料を、研究者を中心に広く公開する施設として、1984年(昭和59年)2月1日に開館しました」とある。なるほど、この施設のことらしい。博物館附設の、ライブラリー兼アーカイブズみたいなもの

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    stkysm 2013/02/24
    「ミュージアムの運営には同時にアーカイブズの整備が必要なことを、ちゃんと理解していて実行に移し得た明治人は、いまの文化官僚より数段えらいと思う。」
  • 歌仙絵と和様の墨蹟/時代の美 鎌倉・平安編(五島美術館) - 見もの・読みもの日記

    ○五島美術館 新装開館記念名品展『時代の美-五島美術館・大東急記念文庫の精華』第2部 鎌倉・室町編(2012年11月23日~12月24日) 新装開館記念名品展シリーズのその二。前期(~12/9)に出ていた国宝『紫式部日記絵巻』をあえて外して、後期に見に行った。冒頭からしばらく、13~14世紀の絵画資料が並ぶ。特に歌仙絵は、これだけ並べて見比べると壮観。後鳥羽院三十六歌仙絵の平兼盛像とか、一歌仙一首歌仙絵の源俊頼像とか、手先を袖から出して、尺を顎に当てたり、髭をひねったり、動きのあるポーズをとる歌仙絵って、ちょっと珍しい(新しい)感じがする。 以前、後鳥羽院三十六歌仙絵の『平仲文像』について疑問を感じた件(『絵画の美』展、2010年)、新刊の図録解説を見たら「仲文(藤原仲文 923~92)は」と、サラッと書き流してあり、オイ、と突っ込みたくなった。 弘安『北野天神縁起絵巻』の断簡も3

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  • 描かれ、演じられた行列/行列にみる近世(国立歴史民俗博物館) - 見もの・読みもの日記

    ○国立歴史民俗博物館 企画展示『行列にみる近世-武士と異国と祭礼と-』(2012年10月16日~12月9日) 「全国的な広がりをもって行列が往来した」という日近世の特色に着目し、参勤交代の武士の行列、朝鮮通信使や琉球王国の使節、オランダ商館長など外国使節の行列、祭礼の行列など、さまざまな行列を紹介する。 冒頭、私たちが行列といえば最初に思い浮かべるのは「大名行列」だが、屏風や絵巻物に書かれた画像の多くは、近代以降の制作です、という指摘に驚く。そうなのか? 冷静に考えてみれば、上杉『洛中洛外図』も、『東福門院入内図屏風』も、行列は描かれているけど、参勤交代の図ではない。近代的な諸制度が整った後、平和で繁栄した徳川の世の象徴として、武士たちの行列が懐かしまれるようになったという。関連して、西条八十作詞の「鞠と殿様」、作者不詳の童謡「ずいずいずっころばし」(御茶壺道中)が取り上げられていたの

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  • 文化財は誰のものか?/コロニアリズムと文化財(荒井信一) - 見もの・読みもの日記

    ○荒井信一『コロニアリズムと文化財:近代日と朝鮮から考える』(岩波新書) 岩波書店 2012.7 書は、いちはやく「帝国化」を遂げた日が、朝鮮半島において行った文化財収奪の経緯を詳述し、戦後、その「返還」をめぐる交渉、成果、さらに残された問題点を、世界で進むコロニアリズム清算の動きとあわせて紹介する。…というのは、断っておくけど、かなり書の視点に歩み寄った要約である。 私は、日が近代化の過程で、隣国・朝鮮に対して、いろいろと非道なことをしてきたと認めるにやぶさかでない。日清開戦の名目をつくるため、京福宮に押し入った日軍が、朝鮮王室の宝物を略奪したとか、戦乱で廃寺・野放しになった仏教遺跡から多数の石仏・石塔が日に持ち去られたとか、後年、鉄道敷設のため、多くの墳墓が取り除かれ、墓の祭器がおびただしく流出したとか読むと、ああ、どうもすいません、という気持ちになる。伊藤博文がソウルの

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    stkysm 2012/09/30
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