4月15日、アメリカのボストンにて、世界中が注目する国際マラソンにおいて発生した爆破事件は、犯人とされるアメリカ在住のチェチェン兄弟の兄が死亡し、弟が逮捕されたことで収束に向かっている。日本でもアメリカでも、チェチェン問題についてはあまり知られていないので、今回の事件は「チェチェン独立派の中の急進的なイスラーム思想を信仰する勢力が、『イスラームの敵』であるアメリカにおいてテロを行った」と理解されている印象を各種報道から受ける。筆者は、このような先入観をここで覆したい。 この問題はもっと複雑である。まず、チェチェン独立派はもはや武装勢力としてほとんど消滅しており、北コーカサスにおいてはその政治基盤すらない。実際に北コーカサスで闘争をつづけているのは、独立派から枝分かれした急進的イスラーム勢力である。しかし、この急進的イスラーム勢力は、その能力においても目的においても対露闘争を最優先事項として