タイムリーすぎて話題沸騰のウォルター・ブロック『不道徳な経済学――転売屋は社会に役立つ』。本連載では、翻訳(超訳)を手がけた作家・橘玲氏が「これからのリバタリアニズム」と題し、リバタリアニズム(自由原理主義)をめぐる現代の潮流を読み解きます。今回は第3回。 第1回はこちら 第2回はこちら ■平和が格差を拡大させた 「世界じゅうで富める者と貧しい者の格差が拡大し、分断が進んでいる」と、右も左もあらゆる「知識人」が主張している。しかしこれはほんとうなのか? ”事実”を先に述べるなら、グローバル化によって世界の格差は明らかに縮小している。このことは、かつては世界の最貧国だった中国やインドで、わずか30年ほどのあいだにグローバル企業がいくつも誕生し、巨大な中間層が形成されたことを考えればわかるだろう。世界の格差を研究する経済学者のブランコ・ミラノヴィッチによれば、グローバルなジニ係数(格差の指標)