プリンスの訃報を耳にしたとき、私は、ついぞ味わったことのない衝撃を受けた。最初はとにかく信じられなかった。次に恐怖と吐き気に襲われた。そして身体じゅうの水分が絞り出されるかのように涙がこぼれ、胃が激しく痙攣した。母親から、大丈夫かとメッセージが届いた。身内も含め、誰かの死にさいして、あんなに早く母親から連絡がきたことは、後にも先にもない。普段、携帯なんてほぼ使わない父親も、自分のお気に入りソングだといって〈スノウ・イン・エイプリル(Sometimes it Snows in April)〉のリンクを送ってきた。プリンスが座るスツールの軋む音が聴こえるのがいい、と父はメッセージをくれた。私は、プリンスのコンサートを生で観られなかった自分を呪った。同時に、プリンスという天才と、長大な宇宙史の刹那を共有できた奇跡に感謝した。彼を讃える言葉など、この世にない。それほど偉大なプリンスの死を、私は心か