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ブックマーク / www.newsweekjapan.jp/column (124)

  • シリアとイラクのアナロジー

    米軍によるシリア軍事攻撃のカウントダウンが始まった。 8月21日にアサド政権側が化学兵器を使った証拠がある、として、オバマ政権はシリアへの軍事攻撃を行う用意がある、と主張した。とはいえ、イギリスでは議会が対シリア攻撃を否決し、オバマ自身も議会に諮らざるを得ない状況。国際世論も消極的だ。 その背景に、イラク戦争での失敗が指摘される。大量破壊兵器の恐怖を煽ったあげくに強行されたイラク戦争では、米英など外国兵4800人以上の死者を出す泥沼が、わずか二年前まで続いていたからだ。アフガニスタンではまだ進行中で、2010年に700人以上の外国兵の死を経験して以降も、毎年400~500人は命を落としている。アフガニスタン攻撃とイラク戦争は、国際社会に「中東での軍事介入は割にあわない」という教訓を残したはずだ。 イラク戦争とのアナロジーは、探せばいろいろと見つかる。米政府がいつも強弁する「独裁政権は大量破

  • 「黒田バズーカ」は空砲だった

    4月4日に黒田東彦氏が日銀総裁に就任し、「量的・質的金融緩和」を打ち出して5ヶ月になる。彼の目標は「マネタリーベース(日銀券の量)を2年で2倍にして、2年後に2%のインフレ目標」を実現することだから、その1/4近い期間がたったわけだ。そろそろアベノミクスの目玉である「異次元の金融政策」の効果が出始めてもいいころだが、どうだろうか? 8月末に発表された7月の消費者物価指数(CPI)は0.7%プラスになったが、この最大の原因は原油価格と電気代が8%も上がったことで、これを除いた「コアコアCPI」は-0.1%と、まだデフレだ。この調子で、あと1年半で2%のインフレ目標を実現するのは、かなり高いハードルである。 黒田氏の政策の目玉は、彼がインパクトのある緩和を発表して「インフレ予想」を起こすことだった。このため、緩和政策の発表では図が多用され、「2年でマネタリーベースを2倍の270兆円にする」とい

  • 「お城」の文化交流こそ日中関係改善の切り札だ

    今週のコラムニスト:李小牧 〔8月27日号掲載〕 今年3月、私は静岡県熱海市を訪れた。熱海といえば温泉、そして知る人ぞ知る秘宝館。中国紙コラムのネタ探しに「性の案内人」が「性の博物館」を訪れたのだが(笑)、「秘宝」の数々よりも、歌舞伎町案内人の目は隣にある熱海城内のある展示物にクギ付けになった。 熱海城(といっても歴史的建造物でなく観光施設だ)の中には「日城郭資料館」がある。日各地の城郭を地図と模型で展示しているのだが、私にとっては隣のエッチな秘宝館より、こちらのほうがずっとそそられた。 私は日のお城が大好きだ。城は日全国でだいたい100カ所あるといわれているが、既に20カ所は回っている。一番好きなのは、中国的な建築様式が気に入って既に3回も訪れている沖縄・那覇の首里城。最近も熊城や大阪城を見に行った。白鷺城と呼ばれる姫路城も、現在修理中で外壁に覆われているにもかかわらず見学に押

    uduki_45
    uduki_45 2013/09/03
    中国と日本では見た目どころか概念自体違うんじゃ・・・ 中国みたいな城はそれこそ小田原城くらいじゃないかな
  • 薄煕来公判は始まりなのか、終わりなのか

    最近の中国はなんだか重い話題ばかりで気が滅入ってしまう。そんな中、元重慶市党委員会書記の薄煕来に対する汚職容疑の公判で、彼の口から夫人の不倫話や手下の横恋慕など思わぬ話題を飛び出してネットを沸かせたのが先週末。だが、終わってしまえばみなの視点は自然に「さて、判決は?」に向かう。 この大物政治家に対する判決については、当然のことながらさまざまな予測が飛び交っている。「ファンが多い」ので、先月2年の執行猶予付きの死刑判決を受けた劉志軍・元鉄道相と同じような温情判決におさまるだろうという声と、「ファンが多い」からこそその影響力を削ぐために厳しい判決が下る、という声がある。いろいろ見渡しても、この二つ以外に大して説得力を持つ予測はない。 だからこそ気が滅入るのである。「世紀の裁判」と言われて注目され、当局も微博を使って公開中継してみせるという画期的な裁判だった。しかし、結局は誰もが政府指導者たちの

  • 国が東電を「支援」する無責任体制はもうやめよう

    東京電力福島第一原発の汚染水が地下水や海水にもれている問題は、予想以上の広がりを見せ、いまだに全容がわからない。26日に現場を視察した茂木経産相は「汚染水対策は東電まかせでは解決は困難だ」とコメントしたが、率直にいって「今ごろ何いってるの?」という印象だ。 福島事故は広範囲に影響を及ぼす国家的災害であり、賠償や廃炉や除染も含めた事後処理のコストは、最初から私企業としての東電が処理できる規模ではない。それなのに東電をスケープゴートにして、国が賠償だけを原子力損害賠償支援機構で「支援」する、というフィクションでやってきたことが、問題をここまで混乱させた原因だ。 根的な問題は、今回の事故の責任はどこにあるのかという点だ。原発事故は最悪の場合、数万人が死亡する可能性があり、民間企業ではリスクを負いきれないので、電力会社の賠償責任に上限を設け、それ以上は政府が賠償する、というのがほとんどの国の制度

  • エジプトの「不愉快な現実」

    エジプトが混沌としている。 断月明けの祝日が終わった直後の8月14日、軍は一斉にムルスィー前大統領派の強制排除に乗り出し、1週間で800人以上の死者を出した。衝突はその後も各地で続き、外出禁止令が発出され、20日にはムスリム同胞団の最高指導者ムハンマド・バディーア氏が拘束された。その前日には、ムバーラク元大統領の保釈可能性が浮上している。これはいったい何だ? 2年半前に転覆した旧体制を復活させることなのか? 混乱しているのは、事態の展開ではない。それを見つめるエジプト、および中東の知識人や活動家たちの言説である。7月の軍クーデター以降同胞団系のメディアは閉められているので、エジプト国内メディアのほとんどが軍に支えられた暫定政権支持派だろうが、その同胞団に対するバッシングは、凄まじい。同胞団=テロリスト、ファシスト、独裁、といった常套句が溢れ、「同胞団は終わった」と主張する。 すでに暫定政

  • 北京の夢

    「ぼく、仕事辞めたよ。大連に行くことにした」 劉くんがぼそっと言った。まさか、と思いつつ、「旅行?」と尋ねたら、「ううん、水曜日に引っ越すんだ。別に持っていくものもないんだけど」と答えた。それを聞いて「やっぱり...」と心のなかでつぶやきつつも、何を言っていいのか思いつかず言葉が出てこなかった。 言葉が見つからなかったのは、劉くんには申し訳ないが、彼が北京からいなくなることがショックだからではなかった。だが、「キミまでもが!」という思いが先走ったからだ。彼自身に何があったのか尋ねる前に、頭のなかを今年すでに北京を離れた知り合いの、さらにそのまた知り合いたちの顔が走馬灯のように横切った。その数をあとで指折り数えたら、もう10人近くもいた。 もちろん、彼らが北京を離れた理由はそれぞれだ。任期切れ、あるいは担当していたプロジェクトが終わった、あるいは結婚転職など、直接の理由だけを見ると、これほ

  • 嫌韓デモの現場で見た日本の底力

    今週のコラムニスト:レジス・アルノー 〔7月30日号掲載〕 6月30日、私は最近話題になっている嫌韓デモに行ってみた。このデモは東京の新大久保で何年も前から、毎週日曜日に行われているものだ。私は不安を胸に家を出た。自分の身も心配だったが、新大久保の人々のことも、日の対外イメージのことも心配だった。 実は新大久保はサンフランシスコのチャイナタウンやパリの日人街と同じような「観光スポット」だ。外国人にとって、新大久保のコリアンタウンを歩くことは伊勢丹新宿店の地階と同じくらい楽しさと驚きに満ちている。伊勢丹が日がいかに洗練されているかを示しているとすれば、新大久保の街が示しているのは日が外国人に対してフレンドリーで開かれた国であり、他国の文化が生き生きと存在できる国だということだ。 だがデモのせいで、新大久保は日が外国人にとっていかに不快な国になり得るかを象徴する場所となった。嫌韓デモ

  • 泉田新潟県知事はなぜ原発の安全審査に反対するのか

    新潟県の柏崎刈羽原子力発電所について、東京電力が原子力規制委員会の安全審査を受けることについて、地元の柏崎市と刈羽村は了承する方針を決めた。東電は新しい安全基準に合わせる工事を進めているが、新潟県の泉田知事は安全審査に反対して設備工事の申請書の受け取りを拒否している。 泉田知事は「県と東電との合意がない」と言っているが、原子力行政は国の所管であり、県に許認可権はない。彼は新基準で新たに設置が義務づけられたフィルター付ベントの設計を問題にしているが、これは高度に技術的な問題であり、素人の知事が設計がいいとか悪いとか判断できる問題ではない。それを審査するのが規制委の仕事である。 こんな調子でいろいろな関係者が反対したら収拾がつかないから、原子炉等規制法などでルールが決まっている。地元の合意が必要なのは立地のときだけで、それ以後の運用はすべて国の所管である。地元との安全協定は単なる紳士協定で、法

  • エドワード・スノーデンは国家反逆罪に値するか

    アメリカ陸軍上等兵のブラッドリー・マニングに対して、軍事法廷が有罪判決を言い渡した。ウィキリークスに70万点に上る外公電やアフガニスタン、イランでの戦地の報告書、ビデオ映像などの機密文書をリーク(漏洩)した罪だ。 この判決を聞いた人々の頭にすぐ浮かぶのは、「それでは、スノーデンはどうなるのか」だろう。エドワード・スノーデンは、NSA(アメリカ国家安全保障局)が秘密裏にアメリカ国民や海外の人々の電話、メール、チャット、ビデオや写真画像などの個人情報データを取得していたという事実を、英米の新聞社にリークした人物。彼はリーク直後にアメリカを離れ、現在モスクワ空港のトランジットエリアに身を隠している。 このふたつのリークは、何が共通していて、何が違っているのだろうか。それは、国家の裏切り者、情報漏洩者、内部告発者のどこに位置づけられるかの違いによる。 マニングの罪状は、5件のスパイ行為、5件の窃盗

    エドワード・スノーデンは国家反逆罪に値するか
  • 「心債」

    中国のネットに重苦しい雰囲気が広がっている。特に「発言する人たち」は今年国家主席になったばかりの習近平がぶちあげた「チャイナドリーム」とやらがいったいどんなものなのか見定めようとしてきただけに、今はなんともいえない煮えたぎるような怒りに身を任せつつ、それを吹き出させる方向を探しているようにも見える。 7月20日夕刻に北京国際空港第三ターミナルの到着ロビーで起こった手製爆弾事件。ちょうど夏休み、そして週末の夕刻ということで、空港に出迎えにやってきていた人も多かったのではないか。爆弾を作って持ち込んだ男の挙動はそれを引火させる前からそんな人たちの目を捉えており、引火と同時に写真や情報が中国国産マイクロブログ「微博」に飛び交った。 そして、その前に彼が配っていたというビラから、事件発生わずか30分もたたないうちにその身元が山東省に暮らす冀中星だと明らかになった。その速さには驚いたが、首都空港とい

  • 日本の大学は非常勤講師を使い捨てる「ブラック大学」

    早稲田大学が今春から非常勤講師に適用した就業規則について、早大の非常勤講師15人が6月、早大総長や理事らを労働基準法違反で東京労働局に刑事告訴した。原告の首都圏大学非常勤講師組合の松村委員長によると、非常勤講師は今年度から契約更新の上限を5年とする、と大学から一方的に通告されたという。 大学側は労働基準法にもとづいて意見を聞いたとしているが、講師らは正当な手続きを経ていないと主張し、「早大はわれわれを5年で使い捨てるブラック大学だ」と批判している。大阪大学も今年度から非常勤講師の契約期間の上限を5年とする規定を設け、これに対しても労働組合が告訴する動きがあり、これは一部の大学の問題ではない。 4月から改正された労働契約法では、非正規労働者が5年を超えて勤めると、人が希望すれば期間の定めのない「正社員」に転換しなければならないため、多くの企業で契約社員などを5年で雇い止めする動きが広がって

  • アラブ世界のメロドラマ事情

    今月初めにロンドンでアラブ人一家とテレビを見ていたとき(エジプトでクーデターが起きていたので)、その家のご夫人が言った。「最近は、アラブ世界向けの衛星放送でもトルコのテレビドラマが大人気なのよねえ。面白いんだけど、恋愛ありお酒ありで、いいのかしら」。 一家は英国在住歴の長い、自他ともに認める徹底した世俗主義者。その一家が「大丈夫なのかしら」というぐらいだから、よっぽど「反イスラーム的」なんだろうか――、などと思っていたら、案の定、最近宗教界からクレームが出た。イスラーム世界が断月に入って一週間ほどした今月半ば、サウディアラビアのイスラーム宗教界の中核をなす高位ウラマー評議会の一員が、次のように述べたのだ。「ラマダーン(断月)期間中にソープオペラ(いわゆる「昼メロ」)を見るのは、イスラーム法に反する!」 断という宗教的慣行の目的は、一か月間、日中の飲を断つことで、貧富の差なく衣足り

  • 「朝日君」

    「日に行ってやりたいこと。それは日人による中国語での情報発信がどれだけ重要かを分かってもらうこと」 3年前の今頃、日の国際交流基金の招きで3ヶ月間日に滞在することになっていた、中国人ジャーナリストの安替は、北京でわたしと会うたびにこう言っていた。そして幸か不幸か、春から準備が進められていた彼の訪日まであと数週間という時になって、尖閣沖で中国漁船が海上保安庁の監視艇に体当りする事件が起きて漁船船長が拘束され、またその船長の釈放を求めて中国各地でデモが起きた。 「幸か」と言うのは、この事件に絡んで「中国のネットでは反日発言が渦巻いている」と報道されたおかげで、ネットで活躍するこのジャーナリストのタイムリーな訪日と発言がメディアに注目されたこと。「不幸」とは、日中間の摩擦に不快感をあらわにし、最初からこの1人の中国人ジャーナリストに警戒心丸出しで接した日人もいたこと。でも、あの時はまだ

  • 自律走行車でもドライブ中のスマホは禁止?

    ドライバーなしに運転する「自律走行車」が、現実的なものになっている。グーグルが開発した自走車グーグルカーはもっともよく知られているだろうが、従来の自動車メーカーもこぞって自走車を開発中だ。 今週、スタンフォード大学でこの分野の開発者、研究者、行政関係者らが集まって、自走車のための法整備などを話し合う会議が開かれた。自走車と聞いても、いったいわれわれの生活にどう浸透してくるのか、いまひとつ実感がつかめなかったのだが、いろいろな側面が学べて随分ためになった。いくつか挙げてみよう。 まず、自走車といってもいくつかのレベルに分かれている。レベル0から4までの5段階である。 レベル0は、運転に際してドライバーがすべてを行うという、まったく自動化がされていない車。そして最高のレベル4は、運転、状況のモニタリングなどが、高速、低速などすべての運転モードにおいて自律的であること。その中間のレベルは、運転モ

  • 英語が苦手な日本人にTOEFL導入は逆効果だ

    今週のコラムニスト:スティーブン・ウォルシュ [7月9日号掲載] 6月のG8(主要8カ国)サミットでデービッド・キャメロン英首相らと英語で堂々と歓談する安倍首相の姿をテレビで見て、大いに感銘を受けた。英語でのコミュニケーション能力の向上を目指す日人にとって素晴らしいお手だ。その安倍首相は日人の英語力強化の一環として大学入試にTOEFL(留学生用英語テスト)を導入することに前向きだが、果たして狙いどおりになるだろうか。 ビジネス重視のTOEICに対し、TOEFLは英語を母国語としない人を対象に英語圏の大学で学ぶ語学力があるかを見る。スピーキングとライティングの試験もあるので、TOEICに比べて受験料が高く、採点もより主観的だ。 安倍首相がTOEFL導入に前向きなのは、日人のTOEFLスコアが他のアジアの国に比べて低いことも一因ではないだろうか。 09年のアジア30カ国の平均点を見ると

  • エジプト 反革命か革命の継続か

    軍と大衆デモによってムルスィー政権が引き摺り下ろされた7月3日以降、エジプトで起きていることをどう見るか、国内外の議論は二分されている。それは「反革命」か、「革命の継続」か、という議論だ。 二年半前、「1月25日革命」で当時の長期独裁政権たるムバーラク大統領を辞任に追い込んだのは、雑多な勢力からなる大衆デモだった。無党派の若者層を中心に、旧左翼、リベラル、イスラーム主義勢力と、さまざまな人々が結集した。その圧力を背景に、政権内エリートだった軍がムバーラクを見限る形で「革命」は成功したわけだが、その後の選挙、憲法制定といった民主化過程で、ムスリム同胞団が権力を獲得した。異論反論はあれど、一応議会選挙と大統領選挙を経て成立したのが、ムスリム同胞団のムルスィー政権だったのである。 反ムバーラクの一連の運動を「民主化」への試みだったと考えれば、不完全ながらも選挙に基づく議会制民主主義を確立して、ム

  • 7月1日、香港

    香港に行ってきた。ご多分にもれず、7月1日の主権返還記念日に合わせてである。2003年以降、市民の間ではこの日は香港政府に抗議して香港政府ビルまで練り歩くデモが行われることになっている。 「香港政府に抗議」って何を抗議するの?――答えは、なんでもあり、だ。この日が「デモの日」になったのは、03年中国国内から持ち込まれたSARS感染者が拡大し、WHOに感染地域に指定されて観光をはじめ経済面で激しく落ち込んだことによる、香港政府と中国政府の腰抜けな対応への激しい怒りからだった。それに、当時ちょうど中国中央政府の肝いりで進められていた、香港の憲法にあたる「香港基法」への公安条例盛り込みに反対し、特区行政長官選出を市民の手で行う直接選挙導入を求めるデモが行われたのだ。 公安条例盛り込み案は結局一旦撤回され、中国の中央政府は2017年に行政長官選挙に普通選挙を導入する可能性を示した。その後毎年この

  • 金子勇氏とWinnyとともに日本が失ったもの

    7月6日、ファイル共有ソフトWinnyの作者、金子勇氏が急性心筋梗塞で死去した。享年42歳。あまりにも早い死だった。警察が彼を逮捕し、Winnyを葬り去ったことによって日が失ったものは限りなく大きく、もう取り戻すことはできない。 Winnyは、2002年に開発されたP2Pソフトウェアである。P2Pというのは、インターネットでサーバを介さずにパソコン同士で直接ファイルをコピーするシステムで、1999年にアメリカで開発されたナップスターが最初である。これは著作権法違反として禁止されたが、その後も世界各国でP2Pソフトが開発された。 Winnyもその一つだが、著作権法違反に問われるおそれがあるため、金子氏(当時は東大助手)は2ちゃんねるに「47」という匿名でプログラムを投稿した。これは大量のデータをコピーするために多くの中継点に部分的なキャッシュ(一時コピー)を残し、次にコピーするときはそのキ

    金子勇氏とWinnyとともに日本が失ったもの
  • 未来志向と伝統回帰が混ざり合う街の不思議

    今週のコラムニスト:マイケル・プロンコ 〔7月2日号掲載〕 ニューヨークやロンドン、パリといった世界の大都市を訪ねると、出会うのはたいていリベラルな人たちだ。でも東京は違う。どういう人と出くわすか予測が付かない。とても未来志向な人もいれば、過去にとらわれたままの人もいる。 東京は世界一リベラルな都市なのか、それとも世界一保守的な都市なのか。いや、その両方なのか! 先日、伝統的なスタイルの結婚披露宴に出席した際、私はある出席者と、とてもリベラルな会話を英語で交わした。日企業はもっと世界に門戸を開き、変化を受け入れるべきだと、彼は熱弁した。私たちが話している間も、その部屋では堅苦しい敬語だらけのスピーチが続いていた。そして伝統的な披露宴に少し国際色を添えた外国人の私も、日語で堅苦しい祝辞を述べることに。やはり東京のリベラルと保守の関係はややこしい。 アジアで、東京ほど外国人に居心地がいい街