外国語が苦手。セックスに自信がない。いざ決断の段となると弱腰。こうした日本人にありがちなコンプレックスを全部ひっくり返してみれば、島耕作の一丁出来上がりである。 世界を飛び回るビジネスマン。外国語も達者で女性にはめっぽう強い。だがそれでいて、働き過ぎ、自己犠牲の精神、会社への忠誠心といった「日本のサラリーマンの美徳」もきちんと兼ね備えた存在。この島耕作というキャラクター像には、実はこのマンガが登場した1980年代前半の日本のサラリーマンの置かれた立場が見事に反映されていた。 島耕作が体現した、日本人の自信とコンプレックス 70年代に入り高度成長期が終わると、日本型企業社会、とりわけサラリーマン的な労働の在り方に疑問符が付けられるようになる。成長を前提とした原理的には終身雇用、年功序列が維持できなくなり、脱サラやクビ切りが話題となり、サラリーマンは必ずしも安定した職業とはいえなくなったのだ。