一ノ瀬志希からアヤシイ口上とともに押し付けられた、小瓶入りのクスリ。 色は透明で、トロミもまったくないから、ただの水と見間違えそうだ。 俺はこれを自分の担当アイドル――佐藤心に飲ませるつもりは、まったくなかった。 あのクスリを捨てずにいた理由だって、 志希が「捨てたら、もっとスゴいクスリをばらまく」と脅すから、仕方なく持ち歩いていただけ。 しかし、もはやそんな言い訳に意味はなかった。 オーディション後の会議で、心も採用を提案すると、 俺は居合わせた同僚・上長の皆から「キツい」と突っ込まれた。 「川島(瑞樹)や片桐(早苗)の開いた路線に乗りたいのは分かるが、もう少し吟味しろ」 と部門長じきじきのお言葉もいただいた。 『はぁーい、プロデューサー! スウィーティー♪ あれぇ?声が聞こえないぞ~? もっかいいくよーっ☆ はぁとと一緒に、せぇーのっ、スウィーティー♪』 26歳という年齢がキツい……だ