21世紀に入り、国際貿易論の分野は変貌を遂げました。まず、企業や事業所レベルのデータの利用が一般的になりました。以前は国や産業といった単位で集計された貿易データを分析するのが一般的でした。今では企業や事業所単位の大規模なデータを分析するのが普通です。さらに近年は労働者レベルや取引レベルのデータへと掘り下げた分析が競われています。その結果、産業や国レベルの貿易データでは分からなかった企業の輸出行動や企業内貿易、外国生産委託の実態が明らかになっています。 それらの実証研究の結果を解釈するには、産業や国レベルの貿易を対象にした既存の理論では不十分でした。そのため、新しい理論が数多く開発されました。 そうした新しい理論の中でも、米ハーバード大のメリッツ教授らが開発した「新々貿易理論」は企業の貿易を考える基本的な視点を提供しました。「新」の字を重ねるのは、1970年代後半にクルーグマンらによって「新