『ホモ・サケル 主権権力と剥き出しの生』の全体は3部に分かれている。 第1部「主権の論理」は、これまで述べたとおりの「例外状態について決定する者」としての主権者の論理をさまざまにあとづけている。暴力と正義の関連、主権権力に先行して前提される構成権力(憲法制定権力)の逆説、「意味なく効力をもつ法」の問題(フランツ・カフカ「法の前」における法の形象をめぐって)などが論じられている。 たとえば、構成権力 (potere costituente)。構成 (costituzione)とは、ヨーロッパ諸語では、憲法のことでもある。構成権力とは、憲法によって構成される諸権力ではなく、それに先行して憲法を制定する源泉のことである。この権力は、自らを他の権力から例外化することによって憲法を可能にする以上、主権権力(自らだけに自然状態を保存して他を統治するリヴァイアサンの権力)へと回収される危険を常にもっ