読もうと思って過ごしてしまった本がいくつかある。そして時代が変わってしまって、世の中がその本のことを、まったく忘れたわけでもないのだろうけど(人の心に深く残るのだから)、あまり読み返されない本はある。絶版となり復刻されない(そのまま復刻すればただ誤解されるだけだろうし)。文庫にもならない。それはそれでよいのかもしれない。世の中とはそういうものだし、そういうふうに世の中が進むのにはそれなりの意味もあるのだろうから。ただ、私はあまりそうではない。 「もういちど二人で走りたい(浅井えり子)」(参照)は読むつもりでいて失念し、いつかあっという間に時が過ぎた。私が沖縄に出奔したころ話だ。癌になって余命いくばくという佐々木功は前妻と離婚し、教え子の浅井えり子と結婚した。純愛のような話題にもなったし、私は引いた奥さんは、愛川欽也の前妻でもそう思ったが、偉いものだなとも思った。ただ、こういう話に仔細はある