2018年は、地価の全国平均がバブル崩壊の1991年以来の上昇に転じたことが大きな話題になった。その裏で、土地所有のメリットより、固定資産税などの負担が重くて放棄される「所有者不明」が増えたことはあまり知られていない。実態を取材すると、不動産の中に「負動産」と呼ぶべき負の存在が広がっていることが明らかになってきた。 JR大宮駅から旧中山道を南に歩くと、10分ぐらいの間に、古い家が歩道まで張り出している場所が2カ所ある。宿場町の旧家のような建物だが、1カ所は屋根まで壊れて危険なため、フェンスで囲われている。その登記簿には、最後の所有者変更は明治30(1897)年で、相続のためと書いてある。もう121年も前で、この年に生まれたとしても生きてはいない年齢だ。もう1カ所も昭和41(1966)年の所有者変更が最後だった。