【井上恵一朗】ユズ、ミカン、ハーブ、ウメ……。地域特産の果実などを餌に加えて育てた魚が、全国で登場している。独特の味や香りで差別化を狙う。消費者の魚離れを食い止め、低迷する養殖業を元気づけることが期待されている。 「徳島産のすだちを食べて育ちました!」 回転ずし大手「無添くら寿司(ずし)」の東京都内の店舗。案内を見て「すだちぶり」の皿を取った主婦(38)は驚いた。「本当にすだちの風味がする」 この秋、徳島県の養殖業「徳島魚市場」が初めて出荷した。鳴門海峡で育てたブリに、徳島名産のスダチの搾りかすを加えた餌を与えた。抗酸化作用のあるビタミンEが通常の4倍近く含まれ、さっぱりした味になる。徳島魚市場の吉本創一常務は「徳島産をアピールし、活気を失った漁業を盛り返すきっかけに」と意気込む。通常の養殖ハマチより15%ほど高値で取引し、生産者の収入を増やしたいという。 「柑橘(かんきつ)系養殖魚」人気