◆マネーって何だ? 「お金、マネー」(以下、両者を総称して「マネー」と言う)とは、預金のことである。もちろん現金(銀行券と硬貨)もお金には違いないが、経済や金融を考えるときに「お金、マネー=現金」というイメージを持ってしまうと本質が見えなくなる。現金は、企業や家計等が必要に応じて自らの預金を引き出したものだ。現在はおよそ84兆円の現金が市中で流通している(いわゆるタンス預金も含む)。支払いや決済の多くは、それが高額であるほど現金では行われない。市中に流通している現金の総量は大きくは変わらないし、キャッシュレス化が進めばその分はむしろ不要となろう。 日銀が(マネーの供給を増やす目的で)大胆な量的・質的緩和を実施しても、現金が増えることはない。現金が増える理由はただ一つ、預金者が自らの預金を現金で引き出すことだけだ。日銀が輪転機を回すから世の中で現金が増えるのではなく、日銀は、預金者が現金を引