東京財団ディレクター(政策研究)・研究員 亀井善太郎 今年は5年に一度の年金の財政検証(年金の将来見通し)の発表が予定されている。前回の記録を遡れば、2009(平成21)年2月23日開催の社会保障審議会年金部会において発表され、同年5月に関連資料を公表1しているので、そろそろ動きが見えてきてもよいはずである。 ところが、どうもそういう動きが伝わってこない。足下の運用は株価の上昇等もあって好調なはずだが、これは長期の年金財政から考えれば相対的なインパクトはきわめて小さい2。より長い時間軸で考えれば、その前提となる経済の諸条件もなかなか改善は進んでおらず、構造的な課題はより深刻となっているはずだ。また、インフレ下ではマクロ経済スライドの適用が予定されているので、制度そのものは持続可能なはずだが、近年のデフレ下ではその適用が進まなかったので3、資産と負債のバランスはより厳しいものとなっていること