渡邊 幹彦(山梨大学生命環境学部教授) 第3回 生物多様性条約の今後の展望 本稿は、3回に亘り、生物多様性条約を解説する記事の最終回である。ここでは、今後の生物多様性条約の交渉の動向を見る上で、どのような点に気をつけるべきかについて、整理してみたい。 1 愛知ターゲットの達成 愛知ターゲットのほとんどは、その期限が2020年である。また、一部のターゲットの期限は2015年である。多くのターゲットは期限まで、あと7年しかなく、一部のターゲットは期限まで、あと2年しかない(下図参照)。まず、期限まで時間がないことを念頭に置き、本質的な問題に焦点をあててみたい。 1)各締約国の生物多様性国家戦略の策定の進捗 愛知ターゲットの「1 人々が生物多様性の価値と行動を認識する」、及び、「2 生物多様性の価値が国と地方の計画に統合され、適切な場合に、国家勘定、報告制度に組み込まれる」が、ターゲット群の根本