日本でも多くの本が電子化され始めた昨今。けれど、読者はまだ電子化されるには至っていない。だから手にするブツがスマホ、専用端末でも、読まれる空間は 「リビング」「自分の部屋」「喫茶店」「電車・バス・飛行機」「トイレ」だ。紙の本と変わらない。おそらく半世紀前、1世紀前も同じだったのだろう。 改めて考えると、この変わらなさはちょっとすごい。そこが理想の読書スペースならまだ分かる。でも、実際はそうではない。心地よく本を読める場所を持たず、猫が陽だまりを探してウロウロするように、読みかけの本やデバイスを抱え、誰にも邪魔をされない落ち着ける場所を探している人は多いはずだ。 それなのに、変わらない。20世紀を通じて、読書の読書による読書のための空間は、ついに生まれなかった。もしかすると、22世紀になっても、人類は超音速旅客機の座席やハイテク便座で読書をすることになるのではないだろうか。なんて壮大な心配を