2017.06.14 聞く耳をもったあなたに読んでほしい。「説得の書」として書かれたジェンダー論の教科書/加藤秀一『はじめてのジェンダー論』(有斐閣) かつてお世話になっている研究者の方からこんな話を聞いたことがある。教師の力量とは、真面目でどんな授業でも熱心に聞く学生や、「授業を真面目に受けるなんてかっこ悪い」とばかりに授業に背を向ける学生ではなく、よい授業をすれば耳を傾け、つまらない授業をすれば話を聞きもしない、そんな学生を振り向かせられるかにあらわれる、と。 この「格言」はジェンダー論の営みにもあてはまると思う。フェミニズムに親和的な人の共感に依存して議論をおろそかにしたり、頑ななセクシストの悪意に疲弊したりする前に、聞く耳を持った人をきちんと筋道を立てて説得しなければならない。そのためには、正確な論理と、理解を促すための適切な比喩やアナロジーが必要で、そしてこの『はじめてのジェンダ