中野氏のこの本は出たときに一読したが正直通読がつらかった。ひとつには日本思想史研究としてはあまりに杜撰に思えた。現代の問題意識にひきつけて過去の思想の再解釈を行うことは、僕は好意的な立場に立つ。しかしそのためには過去の思想を正確にとらえ、また再解釈上、議論すべき論点にはしっかり取り組むということは絶対に必要だ。その意味で中野氏のこの本は通読に耐えないというのが僕の率直な感想であった。 ただネットでは匿名さんたちのレベルで、本書が日本思想史の正確な読解だとかする評価を目にすることもあり驚きを隠せない。おそらくそのような匿名さんたちは日本思想史の基礎的な勉強をしていないか、あるいは単に専門的訓練を経ていない独学者の陥穽に落ちているのかもしれない。 この小室先生の書評は、専門家がどのように中野本を評価するのか、それがはっつきりとわかる素晴らしい内容だ。小室先生の本書の評価はその書評の末尾に要約さ