2025年07月11日18:03 カテゴリ本 戦争が社会保障を生んだ 厚生年金には「事業主負担」という奇妙な制度がある。月額報酬に対する社会保険料率は約30%だが、それを「労使折半」ということにして企業が15%負担する。企業にとってはこれは人件費なので、長期的にはすべて賃金に転嫁される。これを「労働者の負担をごまかす制度だ」という人がいるが、それは逆である。年金制度は、企業が労働者に年金を払う制度から始まったのだ。 その起源は19世紀のビスマルクにある。彼が世界に先駆けて社会政策を実施したのは、イギリスやフランスに遅れて統一国家になったドイツには新たに獲得できる植民地がほとんどなく、工業化で富を増やすしかなかったからだ。ドイツを統一するためにはプロイセンが他の諸邦を併合するしかないと考え、軍備増強につとめた。 その一環として兵士の体力を強化し、遺族の生活を保障する社会政策を整備した。188
