写真:向羽黒山城 向羽黒山城を、ご存じでしょうか? 福島県の会津美里町にある戦国時代の城で、専門家からも東北屈指の名城と高く評価されています。 また、蘆名盛氏、伊達政宗、蒲生氏郷、上杉景勝といった名将らがかかわった城であり、知られざるドラマに満ちた城でもあります。 今回、その向羽黒山城を軸に、気鋭の作家・天津佳之氏が、全3回の特別読み切り連作小説を手がけることとなりました。 記念すべき第1回は、向羽黒山城の築城をめぐる物語。あらたな国づくりを目指す会津の戦国大名・蘆名盛氏のもとには、画僧として名高い雪村(せっそん)がおり、さらには、のちに徳川家康に帰依を受ける僧が現われ……。 「築城に込められた想い――蘆名盛氏」 川の瀬に、可憐な紫が揺れている。 前に垂れた三枚の大きな花弁と、その内で誇らしげに立つ小花弁。都合六枚の花びらを持つその花が、快晴の空の下で群れて咲くさまを、蘆名盛氏(あしなもり
